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注文住宅の費用シミュレーション!
3,000万〜5,000万円の予算別プランと資金計画
DEC.03.2025
注文住宅の費用は、建築費に土地代・付帯工事・税金や保険を加えて決まります。この記事では、注文住宅の費用シミュレーションで総額の目安をつかみ、3,000万〜5,000万円の予算別プランと返済の目安、費用を抑えるコツや補助金・減税の活用まで分かるように解説します。
目次
POINT
- 総額は「本体工事費+付帯工事費+諸費用+土地代」の合計で判断する。坪単価だけの比較は危険
- 3,000万〜5,000万円の予算帯では、延床や設備の優先順位と土地条件で実現内容が大きく変わる。坪数の調整や水回り近接、既製品優先で最適化する
- 住宅ローン減税と補助金の反映、金利上昇の影響試算、維持費・予備費まで見込む資金計画とする
注文住宅の費用シミュレーションが必要な理由

注文住宅は、建売住宅と違って完成価格が最初から決まっていません。間取りや仕様を決めていく中で費用が膨らみ、気づいたときには数百万円単位で予算オーバーしていた……というのは珍しい話ではありません。
費用シミュレーションを行うことで、次のようなメリットが得られます。
- 予算オーバーを防げる
事前に総額を把握することで、資金計画から大きく外れずに済む
- プラン調整がしやすい
「こだわる部分」「妥協できる部分」を整理して優先順位をつけられる
- 後悔のない家づくりにつながる
初期費用だけでなく、ローン返済額や維持費を含めて長期的な視点で検討できる
このように、シミュレーションは単なる「お金の計算」ではなく、理想の住まいを無理なく実現するための必須ステップといえます。
注文住宅の費用内訳と相場感

注文住宅にかかる費用は、本体工事費だけではありません。解体や地盤改良といった付帯工事、登記や税金などの諸費用、さらに土地を購入する場合はその費用も加わります。
こうした内訳を把握せずに予算を立てると、想定以上に総額が膨らみ、後から資金計画を見直さざるを得なくなる恐れがあります。
本体工事費の目安と坪単価の注意点
注文住宅の総費用のうち、最も大きな割合を占めるのが本体工事費です。基礎工事や骨組み、屋根・外壁、内装、キッチンや浴室などの住宅設備を含み、全体の7割前後にあたります。そのため、まず本体工事費の水準を押さえておくことが資金計画の第一歩となります。
費用を把握する際によく使われる指標に「坪単価」があります。これは1坪あたりの建築費を示すもので、おおむね80万〜120万円程度が相場です。なお、坪単価は本体工事費だけを基準としており、地盤改良や外構、登記や税金といった付帯工事費・諸費用は反映されません。そのため、坪単価だけで予算を見積もると、最終的に大幅なオーバーにつながる恐れがあります。
家づくりでは「坪単価=総費用」ではなく、「坪単価+付帯工事費+諸費用+土地費用」という全体像を意識することが大切です。
付帯工事費と諸費用の実態
本体工事費のほかに見落とされやすいのが、付帯工事費と諸費用です。これらは家そのものを建てる費用ではありませんが、実際には数百万円単位でかかるため、資金計画に含めておく必要があります。
付帯工事費とは、建物本体以外の工事にかかる費用を指します。
例)
- 建て替え時の解体工事
- 地盤調査や地盤改良
- 外構工事(フェンス・門・駐車場など)
- 上下水道やガス・電気の引き込みといったインフラ整備
これらを合わせると、総費用の2割前後に達するケースも少なくありません。特に地盤改良や外構は条件によって大きく変動するため、事前の見積もり確認が欠かせません。
一方、諸費用は工事とは直接関係のない費用です。登記費用や印紙税、不動産取得税、火災保険料や地震保険料、さらには引っ越し費用や仮住まいの家賃なども含まれます。一般的に総費用の1割程度が目安とされ、現金で支払う必要があるものが多いため、自己資金の確保が重要です。
本体工事費だけを基準に予算を立てると、付帯工事費や諸費用の分だけ資金が不足する事態に陥りやすいので注意しましょう。
土地費用の影響
注文住宅の総費用を大きく左右するのが土地費用です。すでに土地を所有している場合は不要ですが、土地から購入する場合には数千万円単位の負担が加わり、資金計画のバランスが一気に変わります。
目安としては、総費用のうち土地代が3〜4割程度を占めることが多く、都市部では土地比率がさらに大きくなる傾向があります。例えば同じ30坪の家を建てる場合でも、地方では土地費用が1,000万円前後で済む場合があるのに対し、首都圏の人気エリアでは7,000万~2億円超に達することもあります。この差だけで、建物にかけられる予算が大幅に制限されてしまいます。
以上から、理想の間取りや設備にどれだけ予算を割けるかは、土地費用とのバランスで決まると言っても過言ではありません。
注文住宅の予算帯別シミュレーション|3,000万〜5,000万円

ここでは、「3,000万円台・4,000万円台・5,000万円台」という予算帯ごとに、どのような家が建てられ、どの程度の返済額になるのかを具体的に見ていきましょう。
ローン試算は以下の条件で統一します。
- 借入金利:年1.5%
- 返済期間:35年
- 返済方式:元利均等返済
※返済負担率25%を目安に年収の目安を想定
土地の取得費用については、住宅金融支援機構「フラット35利用者調査(2024年度)」における全国平均が1,495万1,000円のため、ここでは計算しやすいよう1,500万円を加算したケースも併記し、土地あり(土地取得費なし)と土地なし(土地取得費あり)の双方をシミュレーションします。
3,000万円台で建てられる家
建物予算を3,000万円台に設定すると、延床面積は30坪(約100㎡)〜40坪台前半(約140㎡超)が目安です。一般的なグレードなら40坪台も可能ですが、ハイグレード仕様や鉄骨造を選ぶ場合は30坪前後(約100〜110㎡)が現実的な広さとなります。
間取りは3LDK程度のファミリー世帯向けが基本で、余裕があれば4LDKも実現できます。
標準グレードのキッチンや浴室、必要十分な収納に加え、断熱・耐震など基本性能を確保したプランが立てやすい価格帯です。外観の凹凸や特殊形状は抑えつつ、設備は優先順位の高い部分だけグレードを上げると、コストと満足度のバランスが取りやすくなります。

■ローン返済シミュレーション
(建物のみ)
- 借入額3,000万円
- 月々の返済額:約9万1,900円
- 総返済額:約3,858万円
- 年収目安(返済負担率25%):約441万円
(土地購入込み)
- 総額4,500万円(=建物3,000万円+土地1,500万円)
- 月々の返済額:約13万7,900円
- 総返済額:約5,792万円
- 年収目安(返済負担率25%):約661万円
4,000万円台で建てられる家
建物の予算を4,000万円台に設定すると、延床30〜40坪(100〜130㎡)が視野に入ります。大きめのLDKや回遊動線、ワークスペースの追加、吹き抜け・中庭などのデザイン要素も検討しやすく、断熱・耐震の強化や設備グレードの選択肢も広がります。広めの平屋を望む場合も、このレンジから現実味が増します。
■ローン返済シミュレーション
(建物のみ)
- 借入額4,000万円
- 月々の返済額:約12万2,500円
- 総返済額:約5,144万円
- 年収目安(返済負担率25%):約588万円
(土地購入込み)
- 総額5,500万円(=建物4,000万円+土地1,500万円)
- 月々の返済額:約16万8,400円
- 総返済額:約7,073万円
- 年収目安(返済負担率25%):約808万円
5,000万円台で建てられる家
建物の予算を5,000万円台に設定すると、延床50坪前後(約165㎡〜)のゆとりが確保しやすく、完全二世帯や大空間LDK、広めの平屋なども現実的になります。断熱・気密の強化、耐震等級3相当や、内外装の素材選定にもこだわりを反映しやすくなります。
ただし、三大都市圏の土地付注文住宅の平均所要資金は6,989万円ということから、立地や土地の広さによっては妥協が必要ですが、条件次第では都市部でも現実的に建築可能です。
■ローン返済シミュレーション
(建物のみ)
- 借入額5,000万円
- 月々の返済額:約15万3,100円
- 総返済額:約6,434万円
- 年収目安(返済負担率25%):約736万円
(土地購入込み)
- 総額6,500万円相当(=建物5,000万円+土地1,500万円)
- 月々の返済額:約19万9,200円
- 総返済額:約8,365万円
- 年収目安(返済負担率25%):約956万円
なお、三井ホームの「価格シミュレーション」を使うと、外観の好みや仕様を選ぶだけで概算の目安を確認できます。まずは価格シミュレーションで自分の予算帯に近い金額感をつかみ、詳細を詰めていくやり方もおすすめです。
年収・頭金・ローン条件別のシミュレーション

物件価格から逆算するだけでは、家計に無理のない上限は見えないことがあります。そこで本セクションでは「家計→借入額」を算出します。
前提は同じく、金利1.5%・35年・元利均等・返済負担率25%です。同条件では、借入100万円あたりの毎月返済は約3,062円です。
年収別の借入可能額と返済目安
返済に回せる上限(年収×25%÷12)を基準に、「月いくら払えるか」→「借入額」に置き換えます。クイック換算は次のとおりです。
- 借入可能額(万円)≒ 年収(万円)×6.804
※年収×0.25÷12を毎月返済に充て、金利1.5%・35年の係数で逆算した近似
例)
- 年収500万円→約3,402万円(毎月の安全目安 約10万4,000円)
- 年収700万円→約4,763万円(毎月の安全目安 約14万6,000円)
ポイント
- 車のローン等がある場合は、その毎月返済分を差し引いてから計算します。
- 教育費など将来の大きな支出が見えている家庭は、返済負担率を20%に下げて同じ式で再計算すると安全側の上限が分かります。
- 変動金利を選ぶ場合は、金利が0.5〜1.0%上がった想定でも月返済が家計で吸収できるかを同じ手順でチェックしておきましょう。
頭金・ボーナス払いの影響
頭金の効果はシンプルで、入れた分だけ借入が減り、月返済が直線的に下がります。基準条件では、頭金100万円ごとに毎月の返済が約3,062円軽くなります。
例えば、総額4,500万円の計画を頭金500万円で借入4,000万円に圧縮すると、毎月約13万8,000円から約12万3,000円へ、約1万5,000円ダウンします。長期ローンほど総利息の削減効果も大きくなります。
ボーナス併用払いは、毎月の負担を抑えられる一方で、賞与が減った月に支払いが重くなるリスクがあります。安定性を優先するなら、年間返済のうちボーナス分は多くても2割程度に抑えるのが無難でしょう。毎月均等のみで組み、家計の余剰で繰上返済を計画的に行う方法もひとつの案です。
注文住宅の費用を抑える工夫と失敗しないポイント

見積もり段階での工夫と、意思決定の順番を整えることで、数十万円から数百万円の差が生まれます。ここでは、すぐに実行できる具体策と、シミュレーションで陥りやすい落とし穴を整理します。
費用を抑える9の工夫
1.形状をシンプルにする
総2階や切妻といった単純な屋根形状にすると、足場・屋根・外壁の面積が抑えられ、施工の手間も軽減されます。外壁の出っ張りを減らせば開口部や役物も減り、資材費と手間の両方が下がります。
2.床面積を絞る
坪単価×坪数の差の効果は大きく、例えば坪単価70万円なら、間取りなどにも寄りますが、2坪削減で目安として約140万円の圧縮が可能です。収納量は「可動棚」や「縦方向の活用」によって、面積を増やさずに確保します。
3.水回りを近接配置する
キッチン・洗面・浴室・トイレを可能な限り同一ラインにまとめると、配管距離や点検口が短くなり、施工費だけでなく将来のメンテ費も抑えられます。
4.既製品と定尺サイズを優先する
建具・階段・サッシ・収納を既製サイズで統一すると、納期とコストが安定します。造作は「見せ場」を1か所に絞り、その他は既製+可動棚で対応すれば十分です。
5.窓の数と種類を最適化する
小窓を多数並べるより、必要な箇所に適切なサイズの窓を配置します。開口部が増えるほどコストと熱損失が増加するため、はめ殺し窓も併用しながらコストと断熱性を両立させます。
6.設備はメリハリをつける
毎日使用するキッチン水栓や食洗機には優先的に投資し、浴室乾燥機や多機能トイレは優先度を見極めて選別します。照明・カーテン・家電を含む設備や建材は、原則として施工会社が手配します。保証と工程を一体管理するため、施主手配は推奨しません。
7.3年ガーデン提案
初期費用を抑えるために、3年かけて理想の庭を完成させることを意識します。例えば家庭菜園スペースやウッドデッキを入居後の計画とするなど、暮らしの余白を楽しみながら、 お庭づくりをしていくことができます。
8.設計の手戻りをなくす
配線・スイッチ・コンセント・照明位置は、設計確定前に動線や家具配置をもとに決定しておきます。着工後の変更は割高になりやすいため、事前に確定して無駄を防ぎます。
9.予備費を確保する
計画総額の5〜10%を予備費として別枠で用意しておくことで、見積もり差や仕様変更、インフレによる価格変動に備えることができ、契約後の増額リスクを抑えられます。
費用シミュレーションが甘かった5つの事例
1.地盤改良・外構・ライフライン費用をゼロだと想定した
改良の有無や引き込み距離によって費用は大きく変動します。調査結果が出るまでの間は、幅を持たせた仮置き(例:100〜200万円)でシミュレーションしておくと安心です。
2.現金支払い項目を見落とした
融資手数料、保証料、登記、印紙税、火災保険、引っ越し、仮住まいなどは、現金が必要な項目です。これらは自己資金とは別に用意しておく必要があります。
3.金利上昇による影響を想定していなかった
変動金利を選択する場合、金利が0.5%上がったケースで月額返済の増加を試算し、その分を家計に織り込んでおきます。固定金利や固定期間選択型との組み合わせにより、リスク分散も検討します。
4.ランニングコストを軽視した
断熱・気密・高効率設備の導入は光熱費の削減につながります。初期コストだけでなく、入居後の支出まで含めて比較する視点が重要です。
5.補助金・税制の要件を確認していなかった
申請期限、性能要件、面積条件、必要書類などは工程表に反映して管理します。要件の未達や申請漏れがあると、想定していた実質負担よりも費用が増える可能性があります。
補助金・税制優遇を活用したシミュレーション

建築費と土地費用を積み上げた総額に、そのままローン返済だけを当てはめると実質負担を過大に見積もりやすくなります。ここでは、税制と補助金でどれだけ下げられるかを、仕組みと使い方の順で整理します。
住宅ローン減税の仕組み
住宅ローン減税は、年末のローン残高に一定の率を掛けた額を所得税等から控除する制度です。控除率は0.7%。控除期間は新築が住宅の区分により13年または10年、既存住宅は10年です。借入限度額は入居年と住宅区分で異なります。2024年以降に建築確認を受ける新築は、省エネ基準適合が要件です。
■使い方
- 年末残高の見込みを返済予定表で確認する。
- 区分の限度額の範囲で「年末残高×0.7%」を計算する。
- 算出額を「初年度の実質負担減(税額控除)」として家計に反映する。
一例として、年末残高が4,000万円なら初年度の控除見込みは28万円(限度額の範囲内)、2年目以降は元金返済で年末残高が下がるため、控除額も段階的に減ります。なお、省エネ基準に適合しない新築は原則として対象外です。
■補足
新築住宅の固定資産税は3年間(マンション等は5年間)2分の1に軽減されます。認定長期優良住宅は軽減期間の上乗せがあります。
(参考: 『No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)』)
補助金・助成金の活用
国の住宅向け補助は年度ごとに見直されます。2025年は「住宅省エネ2025キャンペーン」の枠組みで、新築とリフォームに関する4本の事業が実施されています。適用条件・申請手続き・受付状況は必ず公式サイトで最新を確認しましょう。
■主な制度
- 子育てグリーン住宅支援事業(新築・リフォーム)
- 先進的窓リノベ2025事業(窓・ドアの高断熱改修)
- 給湯省エネ2025事業(高効率給湯器)
- 賃貸集合給湯省エネ2025事業(賃貸集合向け給湯器)
■資金計画のコツ
補助金の分だけ借入額を減らす想定で試算します。前述のとおり、金利1.5%・35年なら、借入100万円を減らすと月の返済は約3,060円軽くなるため、30万円の補助なら約900円減の計算になります。
これを税額控除(例:初年度28万円)と合わせ、年単位で家計への影響を見ます。適用可否や金額は「住宅の性能区分」「契約・着工・完了の時期」「登録事業者の手続き」で変わるため、初期段階で工程表と見積もりに反映してください。
まとめ

注文住宅の総額は、本体工事費・付帯工事費・諸費用・土地代の合計で決まります。坪単価ではなく総額を基準として確認しましょう。さらに、住宅ローン減税や補助金を資金計画に反映すると、契約後のブレを抑えられます。
本体工事費の目安を素早くつかみたいときは、三井ホームの「価格シミュレーション」をお試しください。外観や部屋数、インテリアの好みなどを選ぶだけで、簡単に結果が分かります。


































