2020.09.29
国土交通省令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)に採択
採択名:三井ホームの「木でつくるマンションプロジェクト」
木造大規模中層マンション「(仮称)稲城プロジェクト」着手
三井ホーム株式会社(本社:東京都新宿区、社長:池田 明)は、2020年11月より東京都稲城市において、木造大規模中層マンション「(仮称)稲城プロジェクト」(5階建て1階RC造、2階~5階木造枠組壁工法※1)に着手することをお知らせいたします。(2021年11月竣工予定)
本計画は、「国土交通省令和2年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に普及性の高い木造大規模中層建築プロジェクトである点が評価され、採択されました。今後は、本プロジェクトを通じて木造の中層建築物における課題を克服することで中層集合住宅へと事業領域を拡大し、地球環境にやさしい木造建築物のさらなる普及に努めてまいります。
- ※1 略称でツーバイフォー工法
本プロジェクトの特徴
~木造による中層マンションを日本に普及させるための試金石となる先導事業~
- 【性能】
- 劣化対策等級3(最高ランク)を取得予定。適切な維持管理により75年~90年の耐久性を確保省エネルギー等級4(最高ランク)を取得予定。気密性・断熱性を高め、冷暖房等のランニングコストを低減
- 【技術】
- 木造枠組壁工法における国内最高レベル(壁倍率30倍)の高強度耐力壁を開発、導入これにより壁厚を従来の約半分に減らし、室内の有効面積を拡大。プランの自由度を高めることが可能に
- 【コスト】
- 構造躯体のパネル化により工期を短縮
木造による建物の軽量化で、建物基礎や地盤改良等のコストを低減
- 【環境】
- 建築物の木造化への取り組み、国産材の活用を通じ、国内の森林資源循環への貢献に寄与


1. 本プロジェクトの背景
地球温暖化防止のための低炭素社会の構築に向け、再生可能な循環資源である「木材」を利用する木造建築への期待は世界各国で高まりをみせています。アメリカ(西部地区)における集合住宅は、70%~80%が木造によるものであり(図1参照)、森林資源が豊富なカナダのブリティッシュコロンビア州においては、2009年のウッド・ファースト法※2の施行をきっかけに6階建までの木造建築物は、高層化が進んでいます。(図2参照)。
日本においても木造枠組壁工法は、2004年の「1時間耐火構造」の大臣認定取得、2010年施行の「公共建築物等木材利用促進法※3」を追い風に施設系建築物(非住宅)が増加傾向にあります(図3参照)。さらに2016年に「2時間耐火構造」の大臣認定を受け、木造枠組壁工法による5層以上の建設が可能となりました。今後木造による中層以上の建築物の普及をはかる上で、さらなる技術性能向上とコストダウンが求められています。
当社は、これまで海外では、北米を中心に木造による中層集合住宅の建築に携わってまいりました。また、国内においても2016年に国内最大の木造枠組壁工法による施設系建築物(写真1参照)を建築するなど、木造の施設系建築物の実績を積んでまいりました。今後は、これまで培ってきた経験を活かすとともに、本プロジェクトを通じて木造の中層建築物における課題を克服することで中層集合住宅へと事業領域を拡大し、地球環境にやさしい木造建築物のさらなる普及に努めてまいります。
- ※2 カナダのブリティッシュコロンビア州の州政府が発注する建築物は、必ず木造とする検討を経なければならないとする法律。
- ※3 今後の需要が期待できる公共建築物等をターゲットとして、国が率先して木材利用に取り組む基本方針について定めるとともに、建築に用いる木材を円滑に供給するための体制を整備することで、林業の持続的かつ健全な発展を図るために制定された法律。
【海外】
図1

図2

参考

集合住宅(2018年,カナダBC州)
延床面積30,658㎡三井ホームカナダパネル施工
【国内】
図3

日本ツーバイフォー建築協会統計調査
写真1

特別養護老人ホーム(2016年,東京都)
延床面積9,773㎡(2,956坪)
参考

保育施設(2016年,千葉県)
延床面積738㎡(223坪)
2. 本プロジェクトについて
本プロジェクトでは、国内で木造の中層集合住宅の普及を促進するため、耐久性・省エネルギー性・遮音性を高め、かつ建築コストを低減する新技術を導入しました。
(1)劣化対策等級3・省エネルギー対策等級4(共に最高ランク)を取得予定
本建物は、住宅性能表示制度における劣化対策等級3※4を取得予定。建物の適切な維持管理により75年~90年の耐久性を確保することで木造建築の市場価値向上を図ります。また、同制度における省エネルギー対策等級4※5も取得予定。建物の気密性・断熱性を高め、冷暖房等のランニングコストを低減します。
- ※4 構造躯体等に使用する材料の交換等、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策の程度。通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で3世代(おおむね75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
- ※5 住宅の断熱措置などを工夫し、4等級の基準に適合するエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅
(2)高強度耐力壁(壁倍率30倍)を開発・採用 ※特許出願中
国内において、中層の建築物を木造化する場合、規定の構造性能と耐火基準を満たすためには、構造壁が厚くなることなどが設計上の課題とされてきました。当社は、その課題を解決するために、木造中層建築物で耐震等級3※6の実現を可能とする高強度耐力壁を開発。枠組壁工法においては、国内最高レベルの壁倍率※730倍を実現しました。
これにより、従来と比べ壁厚を約半分に減らすことができ、建物の有効床面積が増加し、設計自由度も高まります。また、従来よりも土台や梁の本数も削減できることに加え、パネル化により工期の短縮をはかることもできるため、建築コストの低減にも繋がります。

- ※6 地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ。極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第88条第3項に定めるもの)の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度
- ※7 建築基準法で定められた耐力壁の強度をあらわす数値のこと。木造枠組壁工法においては、一般的に3.0~5.0倍の幅で設定されている
(3)「高性能遮音床システムMute(ミュート)」の採用(RC造と同レベルの遮音性能)
中層の建築物を木造化する場合、RC造と比べ軽量化等のメリットがある一方で、高い遮音性の確保が普及のための課題となります。本プロジェクトでは、RC造の集合住宅で求められる要求性能(衝撃音LH-55以下、軽量衝撃音LL-45以下)と同等程度の遮音性能を実現。コンクリートを使用しないため、工期の短縮、建物の軽量化も可能となります。
当社独自の「制振パッド」が高い衝撃吸収性能と心地良い歩行感を実現。さらに、下階の天井を支持する吊天井根太の接合部材に独自の防振天井根太受金物を採用し、上階の衝撃音の伝播を低減します。


(4)NLT(ネイル・ラミネイテッド・ティンバー)※8を採用
NLTは、100年以上前から北米で利用されてきた構造材で、日本においても2020年8月に日本ツーバイフォー建築協会が準耐火構造大臣認定を取得したことにより、同工法の床版・屋根版として「あらわし」で使用することが可能になりました。これにより建物に木質感を醸し出し、断面寸法の異なる材を接合することによる「溝付きデザイン」とするなど、ツーバイフォー建築の意匠デザインの幅がより一層拡がりました。
また、短い製材を継いで長尺のパネルが製作できるため、「大空間」の設計で利用が可能。構造用製材と釘で製作が可能なため特別な生産設備が不要となり、マスティンバー(質量が大きなエンジニアードウッド)の中でのコストメリットも期待されています。本物件では、一部の床組みとして使用しています。

- ※8 NLTとは、Nail-LaminatedTimberの略称一般に市場で流通しているツーバイフォー工法用の構造用製材(2×6材、2×10材などのランバー)を繊維方向が平行になるように釘を使用して製作した構造材
(5)国産材(長野県産・北海道産)の活用
国産材(カラマツ)による枠組壁工法用製材(2×10材)を本建物の床組みの一部として採用します。国産カラマツ材を枠組壁工法用製材(2×10材)の床根太として採用するのは、日本初の取り組みです。国産材の枠組壁工法用製材は、これまで2×4材や2×6材など小断面の生産に限定されていました。日本の森林は、立木の大径化と利用促進が課題となっており、本規格材は新たな国産材の用途として今後の活用が期待されています。さらに三井不動産グループの保有林(北海道)で伐採適期を迎えた木材や間伐材を軒裏や内装材として活用する予定です。


2×4材(38mm×89mm)
2×6材(38mm×140mm)
2×10材(38mm×235mm)
3. 三井不動産グループのSDGsへの貢献について
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/esg_csr/
三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。三井不動産グループのESG経営をさらに加速させていくことで、日本政府が提唱する「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。
*なお、本リリースの取り組みは、SDGs(持続可能な開発目標)における5つの目標に貢献しています。
- 目標3
- すべての人に健康と福祉を
- 目標11
- 住み続けられるまちづくりを
- 目標12
- つくる責任つかう責任
- 目標13
- 気候変動に具体的な対策を
- 目標15
- 陸の豊かさも守ろう


【建物概要】
- 所在地
- 東京都稲城市百村1625-1
- 交通
- 京王相模原線「稲城」駅徒歩4分
- 敷地面積
- 1499.20㎡(453.50坪)
- 構造規模
- 5階建(1階RC、2階~5階木造)
- 法定延床面積
- 3738.30㎡(1130.83坪)
- 用途
- 共同住宅
- 総戸数
- 51戸
- 住戸タイプ
- 2LDK(50.82㎡~56.10㎡) 48戸
3LDK(69.89㎡~96.14㎡)3戸
- 設計・施工
- 三井ホーム株式会社
- デザインアーキテクト
- 株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ
- 着工予定
- 2020年11月
- 上棟予定
- 2021年5月
- 竣工予定
- 2021年11月

参考:三井ホームグループ木造大規模中層建築の施工事例
【国内】

用途:5階建特別養護老人ホーム(1階RC造/2~5階木造)
延床面積:9,773㎡

用途:3階建社宅(木造)
延床面積:2,017㎡
【海外】

用途:6階建集合住宅(木造)
延床面積:約18,215㎡パネル施工

用途:6階建集合住宅(木造)
延床面積:約7,317㎡パネル施工

用途:7階建集合住宅(1階RC造/2~7階木造)
延床面積:約15,900㎡パネル供給

用途:7階建集合住宅(1~2階RC造/3~7階木造)
延床面積:約21,925㎡パネル供給
三井ホーム株式会社 広報部 広報グループ: 03-3346-4649