超高齢化が止まらない。国立社会保障・人口問題研究所の統計データによると、わが国における65歳以上の人口は、第2次ベビーブーム世代が65歳以上になった後の2042年に約3,900万人とピークを迎える。一方、比率にすると、15年の段階で、すでに26.6%と4人に1人を上回っており、36年には33.3%で3人に1人、65年には38.4%、2.6人に1人になる見通しだ。つまり、人口でピークを迎えた後も20年以上、高齢化の流れは止まらないわけだ。これまで以上に高齢者向け医療の重要性が高まり、総合病院だけでなく地域に根差した医療施設の拡充が進むことは間違いない。
こうした中、有効な土地活用のひとつとして、賃貸医院経営が注目を集めている。最近では、利用者の利便性を考え、複数の医院が集うメディカルタウン、メディカルモールといった形態を導入するオーナーも増えている。オーナーにとっても、信頼のおけるドクターは、土地活用のパートナーとして最適だというのだ。
(YOMIURI BRAND STUDIO Creative Editor/Writer 二居隆司)
住宅メーカーとして46年の歴史を誇る三井ホームでは、戸建注文住宅で培った経験をもとに、オーナーに様々な土地活用を提供し続けている。メインになる賃貸アパート経営に加え、三井ホームがもっとも得意とするのが賃貸医院経営で、「ドクターズレントハウス」というブランドで20年以上、営業展開しており、介護施設も含めるとこれまで5,000件以上の物件を手掛けてきた。他のメーカーをはるかに超える実績数である。
同社コンサルティング第一営業部 営業グループマネジャー・医院開業プランナーの丸山さんは、ドクターズレントハウスの運営の仕組みとメリットについて、次のように説明する。
「オーナー様に土地と建物を提供いただき、開業を希望するお医者様に15年から20年の定期借家契約を結んでもらい入居して開業していただきます。賃貸アパート経営の場合だと、入居者の入れ替わりや建物が老朽化することで収入が減るとか、年を経るごとにメンテナンス費用がかさむといったデメリットがありますが、ドクターズレントハウスではそういった心配がなく、長期的に安定した収入を得ることができます。さらに、内装や設備のメンテナンスは入居するお医者様の負担なので、そこの負担からも逃れることができます。お医者様といった社会的に信頼度の高い、経営的にも安定した方がお相手ですので、安心してお貸しできるというメリットもあります。土地活用を検討しているオーナー様と開業を希望するお医者様とのマッチングと、その双方をサポートするのが三井ホームの役割です」<図1>
ドクターズレントハウスの「進化系」といってよいのが、ひとつの敷地に複数の医院と薬局が集まる「メディカルヴィレッジ」だ。8年ほど前に、丸山さんが担当した神奈川県座間市の「ひまわりメディカルタウン」は、内科、整形外科、歯科の3医院と薬局が同じ敷地で駐車場を共有し、開業した。<図2>
「オーナー様は、もともと地元でレストランを経営され、その経営も安定していたのですが、近い将来の相続に備え、転業を検討されていました。土地活用の経験が豊富な方なので、初めてご相談いただいたときから、長期的に安定している上に、地域貢献もできる賃貸医院経営を希望されていました。敷地面積が約700坪あり、1医院では持て余してしまう広さだったので、複数の医院が集まるメディカルヴィレッジでの活用をご提案しました」(丸山さん)
そもそもドクターズレントハウスにおいても、入居するドクターにとっては、土地の購入が不要な分、初期投資が抑えられるというメリットに加え、内装や間取りを自分が希望するものにできるというメリットがある。メディカルヴィレッジだと、それにプラスアルファのメリットがドクターにもたらされるという。
「まず、医院を開業するには、薬局の併設が大事なのですが、複数の医院が集まることで、薬局の誘致がしやすいというメリットがあります。さらに複数の医院が集まることで、相乗効果で患者さんが増えるというメリットもあります。同じ敷地に複数の医院があることで、ある医院に来た患者さんに、他の医院のことを知ってもらうことができ、全体の知名度が上がるのです。入居していただくお医者様の組み合わせは、専門が重複しないようにしていますので、患者さんにとっては1か所で複数の診療を受けることができて便利だという利点もあります」(丸山さん)
経験豊富な丸山さんによると、診療報酬の抑制などで医院経営が厳しくなる中、開業の際の初期投資を抑えたいドクターを中心に、これからもドクターズレントハウスの需要がある一方、長期的な安定収入や地域貢献を願うオーナーも、相当数見込まれるという。
そうした事情を踏まえた上で、丸山さんは、こう話す。
「長年、ドクターズレントハウスを手掛けてきたことで、いまでは調剤薬局様や、お医者様とのお付き合いがある医療機器メーカー様から、厚い信頼を寄せていただいています。開業を希望しているお医者様に、『それでは三井ホームさんに』とご紹介いただくことも少なくありません。オーナー様とお医者様の双方に強いネットワークを持っているのが、三井ホームの最大の強みです。その強みを最大限に生かしつつ、これからも両者の理想のマッチングを実現していきたいと思っています」
賃貸医院運営をしたくても、手を挙げてくれるドクターがいないと実現できない。その両者をうまくマッチングさせる力を持っているから、オーナーは安心して三井ホームに土地活用を任せることができるのだ。
「ひまわりメディカルタウン」で開業した
3人のドクターに話をうかがった。
最初に開業した内科医のEさんは、当初は駅前ビルでの開業を検討していたという。メディカルヴィレッジでの開業については、「初期投資が抑えられるのが魅力だった」という。三井ホームがセールスポイントとする木造建物の耐震性への評価も高く、「おかげで長く安心して診療することができる。好適地に開業できたので、腰を据えて地域に密着した診療を続けていきたい」と話す。
続いて開業した整形外科医のSさんは、整形外科医院は広い駐車場が不可欠な上に、単独での開業だと薬局の誘致がしづらいことから、「メディカルヴィレッジ形式での開業は私にとって好都合だった」と話す。賃貸にもかかわらず、間取りの自由度が高く、リハビリのスペースに十分な広さが確保できたという。また、最後に歯科医院が開業後、患者数が増え、「メディカルヴィレッジならではの相乗効果を実感することができた」そうだ。
最後に開業した歯科医のFさんは、当初は賃貸で開業する予定ではなかったという。実際にメディカルヴィレッジ形式で開業してみた心境を「結果として正解だったと思う。長期にわたって返済にしばられるより、こうした形でスタートを切るほうが合理的ですから」と話す。将来、分院を持つなどの様々な構想をもっており、「ここで経験を積み、自分を磨いて次のステップへ備えたい」と意気込みを語る。
ドクターから三井ホームへ厚い信頼が寄せられる理由が
よくわかっていただけたことだろう。