ニュースリリース

2004.02.26
多摩美術大学との共同プロジェクト
高齢者の住まいと生活空間の提案
3月8日・9日、霞が関で展示会

三井ホーム株式会社(本社:東京都新宿区、社長:中村良二)は、多摩美術大学との共同プロジェクト、「高齢者の暮らしと生活空間の提案」を実施し、3月8日・9日の両日、千代田区霞が関の東京倶楽部ビル1階「三井不動産ケアデザインプラザ」で学外展示会を実施します。
このプロジェクトは同大学環境デザイン学科の3年生(11人5グループ)の課題テーマとして、平成15年10月下旬から約2ヵ月間、体験学習、生活調査を織り込み実施したもので、同大学との高齢者の住環境をテーマとした共同プロジェクトは5回目となります。「既成概念にとらわれず、新たな発想により、高齢者の新しい暮らしと住まいの提案を行う」ことに重点を置き、高齢者の楽しみを生かし、快適で生きがいの生まれる生活空間を提案する住居の模型を製作いたしました。共同プロジェクトの概要と展示会開催要領は以下のとおりです。

  • *ケアデザインプラザ…高齢者の暮らしをサポートするための三井不動産株式会社運営のショールームです。

<共同プロジェクトの概要>

1.目的

高齢者が生きがいをもって、快適で楽しく生活を送るために求められる住宅、コミュニティのあり方について、学生は、既成概念にとらわれない新たな発想と価値観を重視しつつ、高齢者の生活実態を体験把握のうえ、楽しく安心して住み続けられる住環境についての具体的な提案を行うこと、三井ホームは新しいアイディアと課題解決のヒントを見出し、長寿社会研究所の調査、研究に役立てることを目的としています。

2.実施期間

平成15年10月~12月(10月に事前体験学習を実施)

3.参加人数

多摩美術大学環境デザイン学科11人(男性8人、女性3人)

4.学習概要(課題・考慮要件・スケジュール)

高齢者の住環境を考えるうえで設定した具体的な3課題を5グループ(1グループ2~3名)で分担し、住まいと空間のコンセプト立案と模型製作を行いました。提案にあたっては、地域の人間関係や伝え継ぎたいものなどを含む「生活圏すべて」を対象とした視点を持つようにしました。

-課題-

課題1…高齢者夫婦だけの家(3グループ)
趣味や経験を生かして、いつまでも楽しく活動的な生活が送れる住宅、自然や地域とのふれあいが生まれる住宅を提案しました。

  • * 高齢者夫婦(世帯主が65歳以上)のみの世帯数は、2025年には2000年の約1.6倍の609万世帯になるとみられています。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」/2003年10月)

課題2…高齢者を含む大家族の家(1グループ)
親世帯、子世帯が互いを尊重し、さまざまな暮らしの知恵や伝統が自然に伝わる住宅を提案しました。

課題3…高齢者の集合住宅(1グループ)
高齢者が暮らす地域に、ふれあいや生きがいをもって暮らせる集合住宅を提案しました。

-スケジュール-

10月
(1)課題出題・選択
(2)高齢者擬似体験(インスタントシニア体験)
三井ホームの研修センターで加齢用具を身につけ、高齢者を擬似体験
(3)建物見学
横浜市開港記念館などのような横浜市内の歴史的建築物を見学し、継承していくことについて考える
(4)生活者の意識調査
身近な任意の高齢者に対し生活意識に関するヒアリングを行い、生活の張りや楽しみなどを知り、住まいと生活空間提案のヒントとする

11月
(1)コンセプト立案、基本計画、図面作成
(2)模型製作

12月
説明パネル、模型を完成し最終発表会を開催

5.各提案のコンセプトと概要

課題1…高齢者夫婦だけの家

「おばあちゃん文庫」>>写真

コンセプト
自分たちの体験を若い世代に伝えることは、楽しみや生活の張りになると考えます。それによって子どもたちや地域の人と接する機会を創出する「場」として、文庫のある住宅を提案しました。

  • 子どもたちや地域の人と本を通じて交流ができる場「子ども文庫部」と、夫婦2人の生活の場である「居住部」、2つをつなぐ「デッキと庭」の構成です。
  • 玄関ポーチは文庫のエントランスでもあり、子どもたちの興味を引くようドアや壁、手すりに幾何学模様を施しました。
  • 「子ども文庫部」は、暖かく落ちついた雰囲気で本が読めるよう、開口部以外の壁は本棚としました。中央部には読み聞かせの部屋を設置。トップライトからのみ光を取り入れ、物語に集中できる空間を演出します。
  • 「居住部」は夫婦のプライベート空間ですが、子ども文庫とガラス戸で隣接するリビングには暖炉を設置し、子どもたちと話をする場としても考えました。
  • 子ども文庫とリビング、ダイニングから直接出られるウッドデッキは、自然とふれあう共用スペースとして、広くとりました。

「趣味の家」>>写真

コンセプト
夫婦それぞれの趣味活動を充実できるスペースと共通の趣味スペースを提案しました。妻はちぎり絵、夫は盆栽をそれぞれ趣味とし、また庭づくりを共通の趣味として仮定しています。

  • 日常生活の場である「居住部」と、夫婦がそれぞれに持つ「趣味の場」、共通の趣味である庭づくりを行う「庭」の構成です。
  • 「趣味の場」と「庭」は友人や地域とのつながりが持てるよう道路側に設置しました。ちぎり絵の和室スペースに盆栽のスペースが隣接し、互いの気配を常に感じることができます。盆栽のスペースは、サンルームと屋外部から成り、天候により使い分けられます。
  • 「庭」はリビング、ダイニング、寝室から見えるように配置しました。歩道との境界にはすだれを利用。プライバシーを守りながらも、開閉することにより地域とのコミュニケーションを図れます。

「縁のある家」>>写真

コンセプト
住み慣れたまちに暮らすことは、快適で安心な暮らしの重要な要素であり、人々の助け合いによって可能になります。地域の人とのつながりが続けられる「縁」と呼ぶ空間を提案しました。

  • 地域とつながる「縁」空間と日常生活の場である「居住部」の構成です。
  • 「縁」は、和室にしつらえた居間と客間に面し、屋根裏まで吹き抜けた土間空間です。人々が気軽に入れるよう通りに面しており、囲炉裏を設置しました。「縁」部分の内外観は、古い家屋を継承したデザインです。
  • 「居住部」は和室に続くダイニングキッチン、寝室をL字型に配置し、中央には家全体に光が届くようウッドデッキの広い中庭を設置しました。ダイニングキッチンから中庭を通して「縁」の気配を知ることができます。

課題2…高齢者を含む大家族の家

「大家族の家」>>写真

コンセプト
「庭」をふれあいの場として、3世代が笑顔で暮らすことができ、文化や知恵が次の世代へ自然に伝承されたり、祖父母の生活に張りが生まれる家を目指しました。

  • 敷地の南面中央部に配置した庭の中央にシンボルツリーを植え、木のベンチや家庭菜園などを設けて、家族のコミュニケーションの場としてしつらえました。
  • プライバシーも考慮し、庭を挟んで西側に親世帯、東側に子世帯を配置し、双方の世帯の間に、家族同士や友人との食事の場にもなる共有の半戸外スペースを設けました。
  • 両住戸ともキッチン、ダイニング、リビングを一つの空間として設計し、半戸外スペースに隣接させました。

課題3…高齢者の集合住宅

「実のなる集合住宅」>>写真

コンセプト
地域や自然とのふれあいが生きがいと活力を生むと考え、実のなる植物を通して、四季の変化を感じながら、地域や隣人とのコミュニケーションが生まれる集合住宅を提案しました。

  • 全体計画は、住人の憩いの場であり地域の人々との交流の場ともなる「共同スペース」と、それを囲むように配置した「住居スペース」からなる集合住宅です。「共同スペース」には梅とカリンの木、子どもの遊び場があり、「住居スペース」には柿とゆず柚子の木を植栽します。
  • コミュニケーションが広がるよう「住居スペース」にはプライベートな「個人の庭」と2軒に一つ設定した「共有の庭」、「共同スペース」には地域の人々にも開放する「梅の木のある広場」と3種類の庭を設定しました。
  • 「共同スペース」には、梅やカリンの果実酒や梅干しをつくったり、地域の人にそれらを振舞い共に会話を楽しんだりできる施設を設置しました。
  • 各住戸の浴室・トイレはリビングと寝室の両方から入れる動線としています。また、浴室は「個人の庭」に面し、各住戸ともキッチンから「共同スペース」が見え、梅の木の成長や共同スペースの様子が分かるようにしました。

6.まとめ

参加者全員が意欲をもって参加しており、プランニングの詳細や敷地の使い方などにおいて、充実した内容となりました。生活意識調査では、趣味や世代に引き継がれる「もの・こと」が与える楽しみ、自然とのふれあいや地域を含むコミュニケーションのあり方が生活に与える影響を把握できたことにより、生活全般に対する具体的配慮が提案されています。
プロジェクトの実施過程における、長寿社会や住環境の知識の普及とともに、当社の今後の住まいづくりに役立てたいと思っています。

7.学外展示会について

今回制作した提案模型とプレゼンテーションパネルなどの展示会を開催いたします。一般公開ですので、どなたでも入場できます。
期間:平成16年3月8日(月)・9日(火)の2日間
時間:午前10時~午後18時
会場:「三井不動産ケアデザインプラザ」
東京都千代田区霞が関3-2-6
東京倶楽部ビル1階(霞が関ビルに隣接)

  • *展示物:各課題テーマに関するプロジェクト報告をパネルと模型で展示
この件に関するお問い合わせ先

三井ホーム株式会社
広報グループ:03-3346-4649

ニュースリリース