
CULTURE
イサム・ノグチが残した北の大地の彫刻
「モエレ沼公園」
AUG.25.2016
彫刻家であり、AKARIなどのインテリアデザインでも知られるイサム・ノグチ。彼が手がけた公園が、札幌市にあることをご存知でしょうか?雄大な自然と前衛芸術的な建築によって、公園全体がまるで1つの彫刻作品のようにデザインされた「モエレ沼公園」。その設計の背景にはノグチの「自然×アート」への想いが込められています。
アートの力で、傷ついた土地を再生する
幾何学形態を多用した建築や遊具、噴水などが整然と配置された、美しく雄大な景観が広がるモエレ沼公園。しかし、もともとはゴミの埋め立て地として利用されていた土地でした。「人間が傷つけた土地をアートで再生するのは、僕の仕事です」と、イサム・ノグチはこの土地の公園計画に参加。その後17年の月日を経て、2005年にモエレ沼公園はオープンしました。188.8ha・東京ドーム約40個分にも及ぶ広大な敷地の中から、特にノグチの想いを感じ取ることのできる代表的な4つのスポットをご紹介いたします。
四季折々の世界を映し出す「ガラスのピラミッド」
公園のシンボルともいえる、ガラスのピラミッド。瀬戸内海から運ばれた庵治石と繊細なガラスでつくられたアトリウムを中心とした屋内施設です。この建物は、ノグチの友人である建築家イオ・ミン・ペイが手がけたルーブル美術館のガラスのピラミッドへのオマージュとも言える建築物。四角錐と立方体が組み合わさった複雑な形状のガラスは、夏には青々とした芝生、冬には雪原を映し出し、訪れる人々を魅了します。
ユニークな遊具が五感を刺激する「サクラの森」
ガラスのピラミッドに続き幾何学的な設計が目を引くスポットが、サクラの森です。約2,300本の桜が植樹された森とその中に隠されるように配置された7つの遊具エリアで構成された空間は、子どもの感性をくすぐります。126基にも及ぶ遊具はすべて、ノグチによるデザイン。ヴィヴィッドな色彩とユニークな形状が、子どもたちの五感を刺激します。
古代遺跡のような佇まい「プレイマウンテン」
遊具やガラスのピラミッドとはうってかわり、古代遺跡を思わせる雄大なフォルムが特徴的なプレイマウンテン。「大地を使って彫刻をしたい」という若き日のノグチの構想をベースに、約60年の時を経て実現させた大作です。石段は全部で99段、瀬戸内海・犬島から運んできた花崗岩が使用されています。頂上からは、公園全体を見渡す雄大な眺めを楽しむことができます。
荒々しい海の嵐を表現した「海の噴水」
公園の中央にある直径48mの海の噴水。ノグチが手がけたマイアミ「ベイ・フロント・パーク」の噴水の姉妹版です。最大25mまで噴き上がるダイナミックな水の動勢は、さながら水の彫刻のようにも見えます。1日に1回~2回行われるロングプログラムでは、水面全体がうねる荒々しい海のストーリーを体感することができます。幻想的な夜のライトアップも必見。
自然がもつ本来の美しさ、四季折々の変化、素材やフォルムが刺激的な建築設計。「モエレ沼公園」は、自然×アートが結晶した心地よさ・美しさを体感できる公園です。みなさんも「北の大地の彫刻」へ遊びに出かけてみませんか?
( 写真提供:モエレ沼公園 )
モエレ沼公園
北海道札幌市東区モエレ沼公園1-1