
CULTURE
三井デザインテックがナビゲート
デザインから感じるホテルの魅力(2)
NOV.18.2016
その規模の大きさにかかわらず、訪れた人に心地よさを感じさせるホテル。その魅力の秘密を、デザインという切り口から紐解いてみよう。
本の存在と繊細な細工が生む優しく心地よい空間
BOOK and BED TOKYO
ブック アンド ベッド トウキョウ
「泊まれる本屋」をコンセプトにした、リーズナブルなホステル。ベッドは壁一面の本棚の奥にある秘密基地のようなSTANDARDと、箱が2段連なったようなCOMPACTの2種類を用意。本棚の前のロビースペースの他にも、共同のトイレとシャワー、洗面台とWi-Fiを完備している。現在2000冊ある蔵書は定期的に入れ替えられており、文芸書から写真集、マンガ、洋書などが並ぶ。
好きなDVDを観ながら、またはSNSをしながら、気付いたら寝ていた。そんな「しあわせな寝落ち」を楽しめる空間を、という発想から生まれたのが、「泊まれる本屋」がコンセプトのこのホテル。大きな本棚の裏にベッドが作られており、子供の頃夢見た秘密基地さながらの空間だ。それでいて落ち着いた、独特の空気を作り出しているのは本ならではと荒瀬さん。
「本に触れることは、書き手に出会うことであると同時に、自分に出会うことでもあるのでは。その形、重さ、匂い、手垢やページをめくる所作…。本の先には常に『人』が感じられるからこそ、一冊の本にさえさまざまな人が寄り添い、新たな出会いが生まれるのでしょう。最強のアナログである本は、最強のコミュニケーションツールと言えます。優しい空気が感じられるのは、そのせいでしょう」
さらに、ディティールの繊細さが空間の質を高めているのだという。
「本棚の向かいの壁は無地で本棚を引き立てつつ、本棚に合わせた額縁のような装飾を施しています。心地よい緊張感を生むディティールがホテルらしいですね」
このホテルの大部分を占めるのは、大きな本棚と長いソファ。「優しさと面白さ、繊細さ、大きさ、静寂…あらゆる要素を含んだこの空間こそが、老若男女に受け入れられる空間なのかもしれません」
Information
BOOK and BED TOKYO
東京都豊島区西池袋1-17-7 ルミエールビル7階
STANDARD 4500円(税別)、COMPACT 3500円(税別)
JR山手線池袋駅、東京メトロ丸ノ内線・有楽町線池袋駅から徒歩3分
<ナビゲーター>
三井デザインテック
荒瀬仁之 ARASE Hitoshi
三井デザインテックにて、ホテルの空間プロデューサーとして活躍する。これまでに携わったホテルは日本各地に及び、デザインや設計にも造詣が深い。自らもデザインを手掛けながら、ホテルのインテリアを数多くプロデュースしている。
Photo=熊谷義久 KUMAGAYA Yoshihisa
Text=吉田渓 YOSHIDA Kei