「MOCXION」が、
脱炭素への貢献をサポート

東急不動産も相鉄不動産も、
続々と建設に乗り出す

INDEX

三井ホーム株式会社
施設事業本部 賃貸住宅事業推進部
賃貸住宅事業推進グループ長

依田 明史

※撮影当時の部署を記載しています。

中大規模木造建築の普及に向けた取り組みを三井ホームが加速化させている。2023年4月には、木構造ファブリケーターの三井ホームコンポーネントと経営統合。製販一体の体制を整えた。それに併せ、木構造に関する設計相談や部分請負など、社外への技術提供にも力を注ぐ。同社は今、どんな技術力を有するのか。具体例を基にシリーズで紹介する。 第一弾は木造マンション「MOCXION(モクシオン)」。

三井ホームが設計監理・施工する木造マンション「MOCXION(モクシオン)」が、三井不動産グループ内外のデベロッパーに「指名買い」されるようになってきた。2022年11月、三井不動産レジデンシャルが東京・北千束で地上4階建の純木造マンションとして着工したのに続き、2022年12月には東急不動産が川崎市多摩区で地上6階建の学生向けレジデンスとして、2023年6月には相鉄不動産が相鉄いずみ野線ゆめが丘駅前で地上5階建の賃貸マンションとして着工した。

木造マンションの試金石へ独自開発の技術を盛り込む

「MOCXION」といえば、三井ホームが2021年11月、東京都稲城市内に自らを建築主とする第一弾を完成させた木造マンションの商品ブランド。「木造による中層マンションを日本に普及させるための試金石」という位置付けを持つ。
外部向けの見学会には2000人超の申し込みがあり、参加者の中には、その後、「MOCXION」の建設を発注したデベロッパーも含まれるという。三井ホーム 施設事業本部 賃貸住宅事業推進部 賃貸住宅事業推進グループ長の依田明史氏は見学会にも訪れたデベロッパー各社の様子をこう振り返る。
「共同住宅として求められる各種性能を現地でご確認いただき、発注に至っています。例えば遮音性に関しては、隣戸間や上下階での音の伝わり方をご確認いただきました」
三井ホームの木造技術の結晶ともいえる「MOCXION」。そこにはどのような技術が投入されているのか。 まず構造面。中層の木造マンションを実現した1つの技術要素は、高強度耐力壁「MOCX wall(モクスウォール)」である。壁倍率を30倍超まで高めたものの、それに伴い増しがちな厚みは従来の約半分に抑えたため、居住空間は広がりを得られる。「MOCXION」の展開に合わせて独自に開発した技術だ。とはいえ、特殊な金物を利用しているわけではない。「留め付けに利用するのは、引き抜きに強いスクリューくぎです。大工は高圧エアくぎ打ち機という普段から使い慣れた工具で施工することができます。この耐震壁を利用することが、工期を長引かせることもありません」と、依田氏は施工性の良さを訴える。

高性能遮音床システムには耐火建築物向けに改良施す

高強度の耐力壁を用いた場合、地震の揺れを受けた時、それだけ大きな引き抜き力が働く。それに対抗するのが、タイダウンシステム「ロッドマン」である。中大規模木造建築の普及に向け、通常のホールダウン金物に代わる接合金物として先行開発していた。
次に断熱面。高い省エネ性を実現するのは、「ダブルシールドパネル(DSP)」である。発泡成形ポリスチレンを、木質ボードの1つであるOSBで挟み込んだもの。戸建て住宅では既に標準仕様として組み込む。断熱と強度という2つの性能に優れ、例えば斜線制限を受け屋根勾配が切り替わる場合にも柔軟に対応できるため、屋根断熱による広々とした空間を屋内に確保できる。
遮音面では、賃貸住宅用に技術開発を重ねてきた「Mute(ミュート)」と呼ぶ高性能遮音床システムを、耐火建築物「MOCXION」向けに改良したうえで採用。鉄筋コンクリート造の共同住宅で求められる要求性能(重量床衝撃音LH-55以下、軽量床衝撃音LL-45以下)と同等程度の性能を実現する。下階の天井を支える吊天井根太の接合部材には独自の防振天井根太受金物を採用し、上階の衝撃音が伝わるのを防ぐ。コンクリートを打設しない仕様のため、工期の短縮や建物の軽量化にもつながる。
三井ホームといえば、木造枠組壁工法(2×4工法)の雄。戸建て・共同住宅はもとより、医院建築や介護施設に象徴される施設系建物の分野でも、設計監理・施工の実績を数多く積んできた。

2×4工法でも国産材活用2×10材を床根太に用いる

2×4工法であることから、使用木材は輸入材の印象が強いが、最近は国産材の利用も推し進める。2022年10月には、同じグループを構成する三井不動産や三井不動産レジデンシャルとともに、いわゆる木材利用促進法に基づく建築物木材利用促進協定を、北海道内で木材供給に携わる北海道森林組合連合会や北海道木材産業協同組合連合会の、計3者と締結済みだ。
国産材の利用推進の姿勢は、この「MOCXION」にも表れる。稲城市内の第一弾では、国産カラマツで2×10材をつくり、日本で初めて※床根太に用いた。国産材 で従来用いられてきたのは、2×4材や2×6材といった小断面の部材に限られていたが、立木の大径化やその利用促進という観点から、2×10材への展開にも期待がかかる。
木造マンションとして「MOCXION」が注目を浴びた1つの理由は、共同住宅として一定の性能を持ちながら合理的なコストで建設できる点。中大規模木造建築にとって大きな課題であるコストの条件を、1つには技術力で克服した点が、デベロッパー各社からの高い評価につながっている。 「中大規模木造建築に関することは何でもご相談に乗ります」。
依田氏は自信を胸にこう呼び掛ける。

建築概要

  • MOCXION INAGI
  • 所在地:東京都稲城市
  • 延床面積:3,738.30㎡
  • 総戸数:51 戸
  • 工 法:木造枠組壁工法 地上5階建(1階RC造)
  • 設計監理:三井ホーム株式会社
  • 施 工:三井ホーム株式会社
  • 工 期:2020年11月着工~ 2021年11月竣工
  • PARK AXIS 北千束 MOCXION
  • 所在地:東京都大田区
  • 延床面積:1,666.01m²
  • 総戸数:33戸
  • 工 法:木造枠組壁工法 地上4階建
  • 設計監理:三井ホーム株式会社
  • 施 工:三井ホーム株式会社
  • 工 期:2022年11月着工~ 2023年8月竣工

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