憧れをかたちに。三井ホーム
三井不動産グループ MITSUI FUDOSAN GROUP

理想の家、理想の暮らし 05

出典:ELLE DECOR 2024年9月6日発売 No.187

京の美意識と響き合う
理想の家づくり

創業から50年にわたって木の持つ力を信じ、真摯に家づくりに取り組んできた三井ホーム。持続可能な家づくりを追求する同社がクリエイターと共に理想的な住まいと暮らしを考える連載に、元禄元年に創業した西陣織の老舗、「細尾」の12代目、細尾真孝が登場。伝統を未来につなぐための挑戦について尋ねた。

Photos KEI OGATA (portrait) Hair & Makeup HIROKAZU NIWA Text SHIYO YAMASHITA


「HOSOO GALLERY」にて。細尾の前に掛けられているのは、樹齢約180年のしだれ桜で染めた糸で織り上げた新作のアートピース。本年5月に開催された展示会「HOUSE of HOSOO Blossom」で発表された。

Masataka Hosoo
細尾真孝
1978年京都府生まれ。大学卒業後、ジュエリーメーカー勤務を経てイタリアに留学。2008年細尾に入社、20年より代表取締役社長。著書に『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)。

細尾12代目・細尾真孝
「美」を上位概念に抱いてきた
西陣織の価値観を未来へつなぐ

日本の木の家が持つ本質的な価値とポテンシャルに着目し、レジデンスの最上級を求め続けてきた三井ホーム。三井ホームプレミアムでは、伝統的な技法と最先端の技術を織り交ぜ、現代の住まいへと昇華させる取り組みを行っている。

今回の連載では、伝統を継承し革新的なアイデアで世界を魅了する西陣織の「細尾」を京都に訪ねた。そこで語られたのは、木のもたらす循環のストーリーや日本発のラグジュアリーを生み出すイノベーションについて。未来をひらく深い洞察があった。

        

西陣織の老舗「細尾」の12代目、細尾真孝は、1200年にわたり育まれてきた西陣織の伝統を未来につなげるべく、世界が驚くイノベーションを起こしてきた。着物や帯のための織物をコンテンポラリーなテキスタイルとして再構築し、トップメゾンとの協業やラグジュアリーホテルの内装材としての供給を開始。2019年に立ち上げた 「HOSOO」ブランドを成功に導く一方で、新たな分野への進出も続けている。

挑戦を繰り返さなければ
新たなイノベーションは生まれない 細尾真孝

[Hosoo’s Works]
HOSOO FLAGSHIP STORE
細尾の世界観を凝縮した旗艦店

京都・烏丸御池のランドマークとして知られるカフェやサロン、ギャラリーなどが併設された「HOSOO」の旗艦店。2階の「HOSOO GALLERY」では2024年10月13日まで、展覧会『The Mind Landscape』が行われている。
hosoogallery.jp

細尾の最初のイノベーションは2010年。建築家のピーター・マリノからの依頼を機に、世界的な規格の幅150cmで織ることが可能な織機を開発したことだ。

「元来、西陣織の織りの幅は32cm。大きな作品をつくると、どうしても継ぎ目が目立ってしまいます。世界基準のサイズで供給できる設備が整ったことで、ようやく世界のインテリア市場へ第一歩を踏み出せました。しかしこれはあくまでも挑戦の一つ。挑戦を繰り返さなければ、イノベーションもなかなか生まれませんから」

挑戦の道のりに困難はつきもの。細尾もさまざまな課題に直面しては、じっくりとそれらに向き合い、解決の糸口を見いだしてきた。

「特に思い出されるのは、不燃性など、織物が壁装材として認可されるハードルが高かったこと。2016年に始まった『レクサス』のプロジェクトも挑戦の連続でしたが、西陣織の美をどう見せるかに主眼を置き、2020年にはセダンの最上級グレード『LS』に採用されました」

最近では公共施設の張り地に求められる摩耗に強いテキスタイルの開発に成功。本格的に展開する予定だ。

創作の過程で気付いた
「循環」する木のストーリー

「HOSOO」は2024年のミラノデザインウィークで、ミケーレ・デ・ルッキ率いるAMDL CIRCLE とのコラボレーションによる新コレクション「The Mind Landscape」を発表。多彩な樹種の木目のパターンを抽出した織り柄と、海や森の色を用いたコレクションの開発は、細尾にとってもこれまでにない刺激となった。

「ミケーレさんらしい哲学的なアプローチと共にミクロとマクロの視点で木を眺めると、そこには必ず循環があるんです。森を持続させるためには伐採する必要もありますし、その木を建材にして、直しながら使う日本の木造建築も循環ですよね」

細尾は続ける。「木の建物の魅力は、木の温かみや気持ちよさを体感できるところにあります。細尾の織物の制作拠点『House of Hosoo』は江戸時代後期の、ゲストハウス『Hosoo Residence』は大正時代の木造住宅を改装したものですが、どちらも建物の歴史と現代の機能性とが共存した空間です。

実は今、自宅のリノベーションに取り組んでいますが、床には無垢材を選びました。左官の土壁や真鍮などの金物、の織物も取り入れています。自分の感覚を信じて、経年優化する家をつくりたい。もはや趣味ですね(笑)」

[Hosoo’s Works]
HOME COLLECTION
(右)西陣織を日常的に楽しむ新提案

HOSOOのテキスタイルを取り入れたホームコレクションを展開している。自然をモチーフにした西陣織の美しさを取り込んだソファーは、佇まいはシンプルだが存在感は十分。「ソファー ナチュラル FROSTED PETALS」/HOSOO

[Hosoo’s Works]
HOTEL OKURA KYOTO OKAZAKI BETTEI
(左)京の伝統工芸に彩られた客室へ

2022年にオープンした「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」では京都の伝統工芸を担う後継者6人によるGO ONのアイテムが選ばれた。壁面やヘッドボードに「HOSOO」のテキスタイルが採用されている。
okazakibettei.hotelokurakyoto.com
©Nacása&Partners Inc.

歳月を重ねるごとに魅力を増す
真のラグジュアリーを追求

細尾に、これから求められる真のラグジュアリーについて尋ねると、こんな話をしてくれた。

「私たちは長い歴史を持つ、織物でいえばきちんとした縦糸があるものを受け継がせてもらっています。西陣織は、京に都があった時代に、予算に制約のない人々が経済合理性や効率を度外視し、究極の美を求めたものの先にある。抽象的な美を上位概 念に置く価値観を世の中に広げることも、僕らの使命の一つです」

三井ホームの活動の核にあるのも、未来につながる大きな循環を、挑戦を重ねながらつくっていくという姿勢。年を経るごとに魅力を増す木の住宅は、豊かで上質な暮らしを実現する礎となるはずだ。

[Mitsui Home Column]
MITSUI HOME PREMIUM

三井ホームが卓越した技術を結集してつくり上げる最上級のレジデンス「MITSUI HOME PREMIUM」。昨年、大阪・箕面にオープンした「OSAKA RESIDENCE」
(写真)はHOSOOのテキスタイルも採用。日本のクラフトマンシップを昇華した、至高の空間を体感できる。