憧れをかたちに。三井ホーム
三井不動産グループ MITSUI FUDOSAN GROUP

理想の家、理想の暮らし 04

出典:ELLE DECOR 2024年7月5日発売 No.186

インテリアから考える
引き算で発想した家づくり

1974 年の創業以来、日本の住環境向上を目指し、木造ツーバイフォー工法による心地よい住まいづくりに取り組んできた三井ホーム。
創業50周年を記念して、多彩なクリエイターと共に理想的な住まいと暮らしを考える連載の第4回は東京を拠点に活躍するデザイナー、グエナエル・ニコラに理想の住空間と木造住宅の可能性について話を聞いた。

Photos KEI OGATA(portrait) Hair&Makeup HIROKAZU NIWA Text SHIYO YAMASHITA


グエナエル・二コラがインテリアを手掛け、2020年6月に立川に開業した「SORANO HOTEL」のメインロビーにて。大空間の天井には、テントをモチーフにしたルーバーが連なる。
soranohotel.com

Gwenael Nicolas
グエナエル・二コラ
1966年フランス生まれ。ペニンゲン上級美術学校、英国王立芸術学院で学んだ後に来日。1998年にデザインスタジオ、キュリオシティを設立。インテリアからプロダクトまで幅広く活動中。

デザイナー グエナエル・二コラ
伝統的な日本家屋で大いなる自由と未来を感じた

1991年に来日して以来、東京を拠点に活動してきたデザイナーのグエナエル・ニコラ。一昨年、和歌山県の南紀白浜の海岸沿いに、木造の別荘「WA House」を構えた。ダイナミックで開放感のある空間づくりに定評のある彼は、木造建築の未来についてどのように考えているのだろうか。

「日本に来て初めて住んだ家は、私が18歳まで住んでいた家とは全く異なっていました。故郷のブルターニュの住宅は全部石造り。壁が厚くて窓も小さいから、家の中はとても暗い。7人兄弟という大家族でしたから家具も多かった。日本で初めて借りた木造アパートの部屋は、軽い襖を開けたら何もない。そこに自由感じました。何もないということはこんなにも気持ちがいいのかと感動したんです。畳の床で過ごせば、低い天井も高く感じられる。可能性にあふれていると思いましたね」

そう話すニコラ。その気持ちよさを保つべく、2年は大きな家具を入れずに暮らしたという。

「日本に来て家に対する考え方が大きく変わりました。フランスでは部屋ごとに役割が完全に決まっているけれど、日本の家は違います。伝統的な日本家屋の中に未来が見えた気がしました」

2005年には、日本の家に暮らす中で見えてきた空間づくりの優先順位にのっとって自宅兼アトリエの「C-1」をデザイン。厚さ25mmの鉄板を主要な部材としてつくり上げたこの建物は、アトリエ専用となった今も竣工当時の美しさを保っている。

「どこまで空間を広くできるかを考えたら、デザインは引き算になる。私が手掛ける空間の天井には照明もエアコンもないから、2.4mの天井高も5mくらいに感じられます。どこまで広く、高く見せられるかが勝負ですからね」

2014年に家族の生活の場としてマンションをリノベーションした際も、引き算の発想を駆使して空間づくりを行った。

「わざわざ誰々用と分けて部屋をつくらなくても、みんなが気持ちよく自分自身でいられる、それでいて周りの人と同じ空気感を共有できるような空間はつくれます」

建築のプロジェクトにおいては、インテリアを起点に全体を考えるようにしていると言う。焼き杉の外壁が印象的な南紀白浜の別荘「WA House」を建てるにあたり、ニコラはリビングとテラスがシームレスにつながり、自然と一体になるような空間を計画した。

「ここにいると木の建物は生きていると感じます。涼しいし、圧迫感がなくて最高です。木造建築は大いなる可能性を秘めていますよね」

[Nicolas’ Works]
Panasonic / Meduse
柔らかな光を放つ象徴的なフォルム

フランス語でクラゲを意味する「メデューズ」の名の通り、丸みを帯びた有機的なシルエットとガラスシェードが印象的なペンダントライト。空間を情緒的に照らし、オブジェのような存在感も発揮する。/パナソニックお客様ご相談センター

[Nicolas’ Works]
WA House
自然の中に佇む力強く繊細な家

建築事務所ハレトケとの共同設計で和歌山・南紀白浜に建てられたニコラの別荘。2つの和室とリビングルーム、アトリエで構成される平家の室内には、引き戸で空間を仕切る日本家屋ならではの発想が生かされている。2022年竣工。

日本の木造建築の技術は素晴らしい。
もっとアピールすべきだと思います。 グエナエル・ニコラ

三井ホームは最先端の木造建築の技術を用いて、木造のマンションや無柱の大空間を擁する施設を手掛けている。千葉大学柏の葉キャンパス内に開校したインターナショナルスクール、ラグビースクールジャパンの食堂棟などはその一例だ。

ニコラは続ける。 「日本の木造建築の技術はレベルが高いので、もっとアピールしていいと思います。今スイスでは高さ100mの木造高層建築のプロジェクトが進行中で、2027年に完成するようです。日本でも、さらに上質で未来を感じさせる木造建築を提案して、理解を深めた影響力のある人々が木造を選択するようになれば、確実に需要は増えるのではないかと思っています」

ニコラには木造で手掛けたいものが2つあると言う。

「木造の技術で美しいコンビニエンスストアと交番を手掛けてみたいです。毎日目にしているものが変われば、きっと意識も一緒に変わっていきますからね」

三井ホームは長年にわたり、先進的な技術と優れた施工精度によって、質の高い木造建築物を提供し続けてきた。ニコラは提案する。

「三井ホームの技術を生かして、構造だけでなく、全てを木でつくったアイコニックな建物を、日本にぜひ建ててほしいです」

人々が木造建築に未来を見た時、社会は大きく変わり出す。

[Nicolas’ Works]
SENSAI FlagshipStore Shanghai
日本の伝統的美意識をモダンに表現

2023年10月に上海にオープンした、カネボウ化粧品の最高級ブランドの旗艦店。体験型スパとショッピングエリアからなる店舗空間は茶道の思想を現代的に再解釈したディテールが要所に。
sensai-cosmetics.com

[Mitsui Home Column]
Rugby School Japan

木造トラスの天井が美しい
無柱の大空間が誕生

2023年9月に千葉大学柏の葉キャンパス内に開校したインターナショナルスクール、ラグビースクールジャパンの食堂棟。外壁構造をRC造の耐火構造とすることによって、開放的な525㎡の無柱空間が実現した。木造のトラス天井は圧巻。
https://www.mitsuihome.co.jp/withwood/works/0151/