多彩な空間表現を生む化粧漆喰〈前編〉
スタッコ

2021.03.12

“スタッコ”とは、石灰に砂や大理石粉などを混ぜ合わせた原料による化粧漆喰のこと。ヨーロッパでは、紀元前の昔から使われてきた伝統的建材です。これを社名とするスタッコ社は、イタリア漆喰の施工における日本の先駆者として京都で創業。現在、全国各地で優れた技術を提供しています。美しく上質な壁面や天井は、漆喰原料についての豊富な知識と、長年培われてきた専門の左官技術がなければ実現できないとか。MITSUI HOME PREMIUM世田谷レジデンスでも、そのイタリア漆喰が煌びやかなアクセントとして目を引きます。同社の舵取りを担う、甘竹正明さん・繁人さん親子に、他にはない空間装飾の世界を紹介していただきました。

ヨーロッパ産漆喰材の確かな知識と技術力。

奥行きのある立体的な模様と艶やかな光沢をたたえた壁面。その風合いは磨かれた大理石と見まがうほどですが、大理石にはない色合いも表現できます。この壁面をもたらす漆喰材を40年ほど前に日本で初めてイタリアから輸入したのが、エバーファーストという塗装材料の販売会社でした。
「当時は日本での施工例がほとんどなく、業者によっては材料を入手してもイタリア漆喰特有の鮮やかな発色や風合いを十分に出せないことがありました。我々はエバーファーストが輸入した漆喰の素材研究を重ね、施工実績を積むことで、一般的な国産漆喰とは異なるイタリア漆喰に必要な左官技術を高めてきました」とは、スタッコ社前代表の甘竹正明さん。しかし十数年前にこの漆喰材輸入を担っていたエバーファースト社が、事業から撤退することに。そこで甘竹さんが輸入事業を引き継ぎ、2005年にスタッコ社を立ち上げました。これによりイタリア漆喰施工を熟知するエキスパートが、原材料輸入から請け負う「責任施工体制」を確立。職人は外部委託ではなく、自社の社員として在籍しているため、より目が行き届いた施工を可能としています。そんな同社の姿勢は、漆喰内装の細部にこだわる設計者やインテリアデザイナーたちから、絶大な信頼を得るようになりました。

色と質感、バリエーションは無限。

現在、正明さんからスタッコ社の運営を引き継いでいる息子の甘竹繁人さんは、イタリア漆喰の魅力についてこう話します。
「イタリアで製造される漆喰材は、焼いた石灰石を水に漬け、2年ほど熟成させる伝統的な素材もあれば、石英などの鉱物を加え金や銀、メタリック調の風合いが出せるものもあり、実に多種多様です。しかも、漆喰材の組み合わせ方、表面を仕上げる際のコテやハケの使い方や磨き方次第で、その表情のバリエーションは無限に考えられます」
ただし施工は、一般的な漆喰に比べるとはるかに手間と時間がかかるそうです。下地は2回以上塗り重ね、塗布後は乾燥とサンダー掛け(研磨)が必須。それから漆喰材の上塗りも2回以上行い、鏡面仕上げやワックス掛けなどを施していきます。味わい深い斑模様を生むコテさばきや、塗り重ねる厚みの加減などは、長年培われてきた職人のなせる技。一朝一夕では実現できない技術です。>>次回へ続く。

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