ギャラリストに聞く、アートとの出合い方〈前編〉

2022.08.24

インテリアに彩りを与えてくれるアート作品。近年は、特に現代アートの分野に注目が集まっていますが、どんな作品を購入すべきか、そこが難しいところです。そこで、専門のアートギャラリーを運営する美術商「ギャラリスト」に、住まいにアートを取り入れるためのヒントを伺いました。

アートの選択基準は、眺めていて心地よいこと。

小山登美夫 Tomio Koyama
1963年生まれ。西村画廊、白石コンテンポラリーアートでの勤務を経て、1996年に東京・江東区に〈小山登美夫ギャラリー〉を開廊。2016年に六本木に移転。日本人作家を海外に、海外作家を日本に広く紹介。若手作家の発掘、育成に尽力している。CADAN(日本現代美術商協会)代表理事。※写真は2022年1〜2月に開催された「伊藤慶二展」の作品とともに(Photo ⒸDaisuke Akita)
|小山登美夫ギャラリー http://tomiokoyamagallery.com/

ギャラリストの役割は美術品の売買だけでなく、展覧会のプロデュースから顧客のケアにいたるまで、多岐にわたるもの。評価が高まる可能性を秘めた作品と作家を発掘し、その魅力を発信する手腕が求められるといいます。東京・六本木にギャラリーを構える小山登美夫さんは、現代アートを専門とする敏腕ギャラリスト。26年前の独立時、今や世界的な芸術家である奈良美智さんや村上隆さんの作品を世に広めた立役者としても知られています。小山さんに、アートに親しむ秘訣を聞いてみました。
「現代アートって、ちょっと難解な作品もありますよね。無作為に見える色使いや奇怪な造形とか……。でも、圧倒されたり、心に引っかかったりしませんか。まず美術館の現代アート展などを巡って、気になった作品を覚えておくことが大切です」
そんな作品を手掛けた美術作家の創作背景や技法を知ることも、美術愛好のきっかけになるとか。特に新進気鋭の作家を知るには、新作発表の場としているアートギャラリーを訪ねることが近道といえます。
「取り扱う作家の選定時、作品テーマの着眼点や画法の独自性に注目します。例えば、弊廊を窓口とする画家、佐藤翠(さとう・みどり)さんは、服や靴が並ぶクローゼットをモチーフとして、花々や植物を混在させた絵を描きます。輪郭の抽象的な表現や色使いが面白く、とても幻想的ですね」
同様に小山さんのギャラリーで人気のある風能奈々(ふうの・なな)さんの近作では、熱したペンで絵具の層を溶かし引っ掻くようにして、寓話的な世界が描かれています。
「風能さんの作品はアニミズム的な雰囲気も感じられます。個展では、ある骨董店のご主人が李朝の壺をお持ちになり、作品との相性を見てから購入されたことがありました」
ギャラリーでは、額装や壁の掛け方などのサポートもしてくれるとのこと。作品の芸術性や将来的な価値に気をもむより、自宅のリビングを思い浮かべて、インテリアとして気軽に作品を選んでほしいとも。
「毎日眺めて、自分にとって心地よい作品が正解」と小山さんはいいます。

佐藤翠 Closet in My Garden in March 2021
acrylic and oil on canvas 162.5×130.5cm
Photo by Kenji Takahashi © Midori Sato, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

風能奈々 世界が楽しいことを教えてくれる
2020 acrylic on panel 45.6×33.3cm
© Nana Funo, Courtesy of Tomio Koyama Gallery

アートとの出合いの場は、ギャラリー以外にも。

複数のギャラリーが一堂に集まり展示販売をするイベント「アートフェア」も、作品との出合いの場として最適だと、小山さんは話します。
「傾向が異なるギャラリーごとに、作品が次々見られるので効率がいい。アートの最新情報が聞けたり、ブースでの展示方法が、自宅で作品を飾る際の参考になったりもします」
毎年、全国各地で趣向を凝らしたアートフェアが開催されています。大阪では今年2022年7月、〈ART OSAKA〉が、20回目の記念開催に。大正時代のネオルネッサンス建築である大阪市中央公会堂を会場とし、およそ50のアートギャラリ—がブースを設けました。

「ART OSAKA」の様子(2021年/Photo by Yuico Taiya)。 2022年は7月6日〜11日に開催された。 https://www.artosaka.jp/

さらに小山さんは、話題の作家や作品の価格を知る場として、アートオークションも挙げています。大手オークションハウスのウェブサイトには、過去の出品作品と落札額が掲載されているため、アート市場の動向が垣間見られるとのこと。現代アート専門の〈SBIアートオークション〉であれば、億単位の落札額となる作品が出品される一方で、数万円で落札される作品も。気軽に入札にも参加でき、現代アート蒐集の足掛かりにもなりそうです。

SBIアートオークション https://www.sbiartauction.co.jp/

>>次回へ続く。

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