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「建物語」(2) ~弘前市 旧藤田家別邸~

ART

「建物語」(2) ~弘前市 旧藤田家別邸~

OCT. 7.2016

明治から大正時代に建てられた歴史的建築には、新時代の到来を告げるような意匠を纏い、建て主の情熱を感じさせる洋風建築が多くあります。今回は東北地方へ足を運び、弘前にある洋館を山本容子さんとともに訪ねました。

日本屈指の財界人が故郷に構えた別邸

江戸時代に弘前藩の城下町として発展した弘前。赤い屋根が印象的な旧藤田家別邸は、その市街地中心部にある美しい庭園の中に佇んでいます。建て主の藤田謙一は弘前市出身の実業家で、日本商工会議所初代会頭を務めた人物として知られています。大正10年、苦学の末に日本屈指の財界人となった藤田は、故郷に東京から庭師を招いて造園し、別邸として洋館を建てたのです。「赤い屋根の塔屋が北海道のサイロを連想させる」と外観の印象を直感的に語る山本さん。この建物を設計した堀江金蔵の父であり、弘前に多くの洋館を残した名棟梁の堀江佐吉は、函館や札幌の洋風建築を独学で研究したと言われています。当時のサイロの意匠を息子に伝え、それが藤田家別邸に生かされたとしても不思議ではありません。

細部に宿る、意志と情熱

多彩なガラスによるデザインや抽象的な図案のものなど、部屋を様々に美しく飾るステンドグラス、星を連想させる凝ったデザインの照明 、繁栄の象徴である唐草文様をあしらった壁のレリーフ。洋館の中には、美しい意匠が随所に施されています。階段を降りながら、室内の装飾やディテールが目を楽しませると語る山本さん。 細部に行き渡る意匠に、建てた人の強い意志や情熱が感じられます。

功績を今に伝える、成功の証

赤い屋根の棟屋からは、弘前の街並みが一望できます。 「あのうっすらと見える稜線は岩木山じゃない?…だとしたらここは岩木山を眺めるための場所ね」と、山本さんは雨雲の切れ間に偶然、岩木山の姿を見つけました。実際この棟屋は、晴れた日に津軽富士と呼ばれる岩木山を望む格別の場所となります。若かりし頃の藤田謙一は成功するまで二度と故郷には帰らないと誓ったといいます。つまりこの別邸は、一代で築いた成功の証。現在は一般公開され、藤田の功績を今に伝えています。

旧藤田家別邸

青森県弘前市大字上白銀町 8-1

〈開園期間〉4 月中旬 ~ 11月23日(開園期間中は無休)

〈開園時間〉9:00 ~ 17:00(入園は16:30 まで)

〈入園料〉大人:300円 子供:100円

山本容子

銅版画家。版画の他にステンドグラスやモザイク壁画など活動の幅も広く、絵本や画集などの著書も豊富。

http://www.lucasmuseum.net/

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