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日本の老舗が目指す<br> 「世界の定番」<br>  ~マルニ木工 名作Story~

SPECIAL

日本の老舗が目指す
「世界の定番」
~マルニ木工 名作Story~

AUG.18.2017

木目の美しさが際立つ白木を丁寧に磨いた、なめらかな木肌。座る人を優しく受け止めるようなフォルム。世界中で愛されるこの椅子の名前は、HIROSHIMA。広島県の老舗家具メーカー、マルニ木工のブランドです。

2016年、2017年の「ミラノサローネ」では、世界最大の家具見本市において最も注目を集めるメインブースでスタッキングチェアやスツールなどを発表し、話題となりました。今、グローバルブランドとして注目を集めるマルニ木工で、「世界の定番」が生まれた理由を探りました。

社長がワクワクするものづくりの現場

 広島県広島市佐伯区。緑の豊かな山道を車で走った先に、木々に囲まれた「マルニ木工」の本社と広大な工場がありました。出迎えてくださった代表取締役社長の山中武さんは、工場を見渡しながら言います。

「手頃な値段で高品質の家具を提供するため、昭和3年の創業時からマルニが掲げているのが『工芸の工業化』、つまり機械加工と手仕事の分業による工業生産です」

 もちろん、ボタンひとつで家具が出てくるわけではありません。製品を生産ラインに載せるには、手作業で作った原型を元に、何十もの刃を動かして木を削る機械のプログラミングをします。プログラミングには、どの角度からどう削ればいいかがわからないと、機械を使いこなすことはできないと言います。

「うちの強みは、職人の技と経験を機械に落とし込めるエキスパートが各分野にいること。みんな、木が大好きなんです。入社当初、元銀行員の発想でリストラや合理化ばかり考えていた僕に、ものづくりの面白さを教えてくれたのは従業員でした。僕は今でも工場を見て回る度に、ワクワクするんですよ」

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先ず手作業で椅子を作り、その原型から機械のプログラミングを行う。各工程ごとに、常に人の手で仕上げていく。 基本に職人技があるからこそ可能となる『工芸の工業化』。「良い家具を多くのお客様に」創業者の想いが引継がれている。

引き継がれる職人の技術と経験

広大な工場を案内してもらうと、ものづくりの中心には人がいました。大量の材木から色ムラや節のあるものを厳しい目で選り分ける人。細かく調整しながら部材を見事な曲線に削る人。細かい凹凸に合わせてソファの布地を手早くきれいに張っていく人。クラシック家具を扱っていただけあって、その技術力の高さと確かさは一目瞭然です。

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左:機械で削られた部品を組立てる前にも細かなチェックが行われる。

右上:滑らかに見える皮にも生き物ならではの傷跡がある。中には製品後に浮き出るものも。経験から事前にリスクを回避する。

右下:クラシック家具の曲線の多い立体的な造形に沿って生地を張るのは至難の業。まるで魔法のように仕上げる動きに熟練の技術を知る。

HIROSHIMAアームチェアの生産ラインでは、最後の仕上げを手掛ける職人さんが手で木の表面を磨き、あのなめらかさに仕上げていました。

「同業者に『マルニさんらしい仕上げですね』と言われるのが、うちにとっては一番の褒め言葉なんですよ」。

そう教えてくれた山中さんの顔は、誇らしげでした。

修理部門では、50年前に製造されたソファの修理を終えたベテランの職人さんが、熱心に何かを書いていました。聞くと、次にこの修理依頼が来た時に後輩たちが困らないよう、どこをどう修理したか、自主的に書き残しているそう。数十年先を見据えて技術と経験を継承していこうという職人の矜持もまた、マルニの強みなのでしょう。

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左上:丁寧に作られているからこそ、修理には細心の注意と手間が掛かる。

左下:世界遺産で使われる椅子も代々マルニ木工でメンテナンスされる。

右:十数年後の修理の際に困らないよう細かく手順を記すベテランの職人さん

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工場をご案内下さった竹内勝則さんは、最後の仕上げとなる磨きの達人。現在は若い職人さんに技を伝授し、見守る立場に。座ると無意識に撫でてしまう、あのうっとりする滑らかな仕上げは、重要なHIROSHIMAらしさ。大切な技の継承がマルニ木工を支えている。

必要なのは優れた技術と職人の提案

HIROSHIMAの美しいデザインを手がけたのは、日本を代表する深澤直人さんです。やはり、世界で活躍する有名デザイナーとは誰もが一緒に仕事をしたいものなのかも…。そう思って聞いてみると、深澤さんにお願いした理由は意外なものでした。

「現場の人間が『深澤さんとやりたい』と口を揃えたんです。以前、国内外の著名なデザイナーとのプロジェクトを行った時、真っ先に工場を見にいらしたのが深澤さんだったんです」

 深澤さんもまた、「あと0.2㎜細くして」というオーダーにも全力で応えるマルニの技術力を認め、そこには強い信頼関係ができていたと言います

「お願いにあがった時、深澤さんがおっしゃったんです。『木の椅子が評価されるには、美しさだけでなく座り心地と強度も大切で、それは優れた技術を持つ職人のリーズナブルな提案があって初めて実現できるんです。その上で、北欧の名作を超える世界の定番を作りましょう』と」

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「見た目の美しさだけでなく、座り心地と強度が大事。」深澤氏の言葉は、深澤氏に出会う前、あるデザイン画を見た現場の職人さんから出ていた言葉とリンク。同じ想い、同じ責任感が、世界の定番の実現の基盤を支えている。

試作を何度も重ねて誕生したHIROSHIMAは、今やマルニ木工を代表する人気チェアに。当初月産40脚だったアームチェアは今では月産600脚となり、海外の空港やレストランで使われています。世界に愛される理由、それは高い技術力とデザインの力、そして人々の情熱なのだということを、木とものづくりが好きでたまらない、マルニ木工の人々の笑顔が物語っていました。

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マルニ木工公式サイト http://www.maruni.com/jp/

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