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無意識に働きかける木の不思議な効果

SPECIAL

無意識に働きかける木の不思議な効果

JUL. 5.2017

科学的な観点から、脳と空間との意外な関係を、脳の研究者である池谷裕二教授に語っていただく3回シリーズ。第3回は、無意識に働きかける木目の空間や色の作用について語っていただきます。

心の奥の無意識へ働きかける室内環境

木目を見ているだけで、血圧が下がるという論文があります。木目が全くない部屋、45%木目調の部屋、90%木目調の部屋を用意して、被験者にそこで過ごしてもらうのです。
すると木目の面積が多ければ多いほど、数十分かけてゆっくりと、血圧が下がっていく。おもしろいことに、木目が好きかどうかにかかわらず、誰でも木目を見ていると血圧が下がる。意識上の好悪や嗜好とは別に、室内環境が「無意識」へ働きかけるのです。

この「無意識」というのが非常に重要で、「意識」は、私たち専門家に言わせれば“飾り”に過ぎないのです。
例えば、本人の意識レベルでストレスを感じていない場合でも、血液中のストレスホルモンの濃度をはかると、驚くほど数値の高い人がいます。この意識に上がってこない身体ストレスが、実は要注意なのです。ストレスホルモンの量が多すぎると、神経機能が衰えてしまったり、ひどい場合は、命にかかわる場合もあるからです。ですから、意識上のことだけにとらわれず、無意識が何を感じているかを大事にしなくてはいけません。

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さて、無意識がいかに重要かについて、興味深いある実験をご紹介しましょう。参加者の前のモニターに「握れ」と表示されたらグリップを握ってもらうということを何度も繰り返し、その平均値を出すものです。ときどき、「握れ」と表示される直前に、見えないほど瞬間的に「がんばれ!」と表示します。すると、握る力がそのときだけ、なんと倍も強くなったというのです。本人には「がんばれ!」の文字は見えておらず、意識上では何の変化もないのに、無意識が身体に影響をもたらすサブリミナル効果といえるでしょう。

色が無意識に与える不思議な効果

色彩心理学の研究では、赤い色が闘争心やモチベーションを下げてしまうことが知られています。ボクシングで赤コーナーと青コーナーのどちらが強いかご存じですか? 強いほうが赤を取るので、圧倒的に赤コーナーの勝率が高くなりますね。しかし、実力が拮抗している選手同士で比べても、赤が1.5倍くらいの確率で勝っているという結果があります。これはレスリングやテコンドーなどあらゆる試合でも同じ。一見、赤い色を身につけることでパワーがみなぎっているように思えますが、実は赤を見せられた相手のヤル気がそがれているのです。サッカーや野球などのチームスポーツでは、どうかというと、ユニフォームは敵味方がそれぞれ目にするので、色による差はあまり出てきていないのです。

同じことが勉強や仕事をするときにもいえます。知能指数を測定するIQテストで、問題の中身を変えずに、表紙や解答用紙の色だけさまざまに変えて点数を比較したところ、赤だけ成績が悪いということがわかりました。ほんの少しだけページの片隅に赤色が入っていても、点数が下がるのです。スポーツの話と同様、赤を見ると、自分でも意識しないうちにヤル気が落ちているからと考えられます。
これをふまえて、わが家のインテリアを決めるときには、机の周りやカーテンなどに赤を極力使わないようにしました。では勉強や家族団らんにはどんな色がいちばんいいかというと、残念ながらまだ解明されていないのですが。

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長い時間を過ごす家は、ストレスをうまく中和してリラックスし、明日への英気を養う空間になっているのが理想的だと思います。そういうとき、木目を眺めるというのは簡単に取り入れられるのでおすすめです。また、人とのコニュニケーションや、散歩などの軽い運動もストレスホルモンを減らすことができます。

このように、無意識への働きかけを考えた家づくりを通して、よりよい毎日を過ごせるように工夫してみてはいかがでしょうか。

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<PROFILE>

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池谷裕二教授

Yuji Ikegaya

1970年静岡県生まれ。薬学博士。東京大学薬学部教授。脳研究者。『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(ともに講談社ブルーバックス)、『受験脳の作り方』『脳はなにかと言い訳する』(ともに新潮文庫)など著書多数。

http://www.yakusaku.jp/

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