ニュースリリース

2015.12.09
国内最大、ツーバイフォー5階建て特別養護老人ホームが上棟
平成26年度国土交通省木造建築技術先導事業
~ミッドプライウォールシステム※1(高強度耐力壁)を国内で初めて採用~

 アンド・アース

三井ホーム株式会社(本社:東京都新宿区、社長:市川俊英)は、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)では延床面積で国内最大となる5階建て特別養護老人ホーム「花畑あすか苑」(事業主:社会福祉法人聖風会)が平成27年12月、東京都足立区で上棟することをお知らせいたします。
この建物は木質系5階建て耐火建築物(1階はRC造)で、延床面積が9,000㎡を超え全長81mにおよぶ大規模な特別養護老人ホームであり、居室数は160室と単体施設では都内最大級となっています。ツーバイフォー工法の建築物として国内最大であるだけでなく、4層以上の中層木造建築物の地震時の横揺れに有効な新技術としてカナダで開発されたミッドプライウォールシステムを採用した国内初の建物でもあります。また建築にあたっては、強度を確保するための独自金物を用いたタイダウンシステム※2の全面的採用に加えて、個室ユニット組み立てによる施工方法を採用するなどの合理化への取り組みも含めて、大規模中高層木造建築物としての先導的モデルに評価され、平成26年度の国土交通省木造建築技術先導事業として採択されています。
当社は、成長事業と位置づける施設系建築「with wood(ウィズ・ウッド)」において、構造面、空間創造面、経済面などにおいて、技術・品質の進化を図り、地球環境と人に優しい木造による医療・福祉施設、文教施設、商業施設などの大型施設系建築事業の拡大を目指してまいります。

「花畑あすか苑」の完成予想図
「花畑あすか苑」の完成予想図
  • ※1 ミッドプライウォールシステム(Midply Wall System)は1998年カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーのフォリンテック(Forintek Corp. 前身はカナダ国立林産試験場。現在はFPInnovationsとして改組)とブリティッシュコロンビア大学によって考案された木質構造の高強度耐力壁です。通常のツーバイフォー建築物と同等の部材のみを使って組み立てられるにもかかわらず優れた水平耐力性能を発揮できるため、4層以上の中層木造建築物に有効な施工技術です。FPInnovationsのDr. Erol Varogluとブリティッシュコロンビア大学のDr. Siegfried Stiemerが"Midply Wall System"の開発者であり、知的所有権を保持しています。
  • ※2 タイダウンシステム 下記参照

1.建物概要

建築地
東京都足立区花畑4-20-1
建築主
社会福祉法人聖風会
施設名称
花畑あすか苑
設計者
株式会社メドックス
構造設計
日本システム設計株式会社
施工者
三井ホーム株式会社
敷地面積
4,551.39㎡(1,376.79坪)
建築面積
2,495.83㎡(754.98坪)
延床面積
9,789.47㎡(2,961.31坪)
階数
5階建て(1階:鉄筋コンクリート造 / 2階~5階:2×4造)
建物用途
特別養護老人ホーム140室、短期入所生活介護施設20室
認知症対応型デイサービスセンター、居宅介護支援事業所
地域交流スペース(防災拠点型)
竣工時期
2016年6月

[プロジェクト概要]
本プロジェクトは、足立区・荒川区・台東区などで複数の特別養護老人ホーム、高齢者在宅サービスセンターなどを運営する社会福祉法人聖風会(昭和30年設立)が運営主体となり、都有地に特別養護老人ホームを建築するものです。事業としては、足立区の第5期介護保険事業計画最後の公募『都有地活用による地域の福祉インフラ整備事業』に応募し、16法人もの応募の中から選定されました。
「花畑あすか苑」とは、建設地の花畑で毎日、明日、未来と末永く利用者に愛される施設となるよう願いを込め命名され、全160室の超大型施設となります。
参考:社会福祉法人聖風会ホームページ(職員募集ページも) http://www.seifuukai.or.jp/

2.平成26年度の木造建築技術先導事業に採択された技術要素

①高強度耐力壁ミッドプライウォールシステムを採用
本建物はツーバイフォー工法とミッドプライウォールを組み合わせた工法が採用されています。外周部をツーバイフォー構造とした建物に、下層階部分(本計画では2~4階)の内壁にミッドプライウォールを使用することで耐力壁長を減らすことが可能となり、共用部分に開放的な空間を実現するとともに高い耐震性を確保することができます。
さらにミッドプライウォールシステムの特長として、特別な材料、装置、スキルを必要とせず、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)用の一般的な材料のみを使って組み立てられることがあげられます。平使いに配置するたて枠で構造用面材(OSB)※3を両側からサンドウィッチ状に挟み込むため、くぎは二面せん断※4を受けることになります。二面せん断のくぎ接合部は一面せん断(一般的なツーバイフォー工法)に比べせん断強度が約80%高いとされていることから、建物に地震や台風などの力が作用した時には、ミッドプライウォールシステムが優れた水平せん断耐力を発揮します。

ミッドプライウォールシステム(ダブル仕様)
ミッドプライウォールシステム(ダブル仕様)
  • ※3 構造用面材(OSB) オリエンテッド・ストランド・ボード。細長い木片を一定の方向に並べて接着し、熱圧成形したボード。
  • ※4 せん断 はさみなどを使って挟み切るように、物体のある面の平行方向にすべらせるように力が作用すること。
<模式図>
模式図
<4階 耐力壁配置図>
4階 耐力壁配置図01
4階 耐力壁配置図02

②独自開発のタイダウンシステムを全面的に採用
中層木造建築物では非常に大きな引き抜き力が耐力壁に生じることになり、これに対応するため、従来のホールダウン金物に代わるタイダウンシステム「ロッドマン」を全面的に採用しました。当社独自開発の構造用金物である「ロッドマン」は、通常の3階建て以下で使用しているホールダウン金物の10倍以上の強度を発揮し、建物の中でより高い強度を求められる部分で使用しています。
平成24年度木造建築技術先導事業(第2回募集)で採択された「銀座2丁目5階建ツーバイフォー耐火店舗併用共同住宅」において一部試行したタイダウンシステムを、今回本格導入し検証を重ねることで、今後の大規模中層建築物への活用を図ってまいります。

独自開発のタイダウンシステム「ロッドマン」(3階部分)
独自開発のタイダウンシステム「ロッドマン」(3階部分)

③大規模木造建築物に適したユニットによる施工法
個室ユニット(壁の箱組)作成によるユニット工法を5階部分に採用しています。施工効率と品質の向上、ならびに高所での作業負担を軽減し、安全性の向上を図ることを目的としています。

個室ユニットによる施工部分

2階~5階は東西ウィングで形成されており、東ウィング5階の個室においては、今回採用する大規模木造建築物に適したユニットによる施工法を交えて組立て、西ウィングにおいては、従来の施工法(壁パネルをクレーンで吊り上げる)にて組立てています。ユニットによる施工法を活用することで、今後の中層・大規模木造建築物の施工効率の向上を図ります。

【参考:大規模施設を木造で建てるメリット】
【参考:大規模施設を木造で建てるメリット】

■冷暖房のランニングコストを削減します
当社建築の介護施設は、断熱性と気密性に優れており、冷暖房稼働期間を短縮でき、日常の設定温度を抑えめにすることが可能となります。RC造に比べて冷暖房のランニングコストの節約が可能で、環境への負荷も軽減できます。

出所:COFI(カナダ林産業審議会)「高齢者施設/住宅の未来を探る」より
出所:COFI(カナダ林産業審議会)「高齢者施設/住宅の未来を探る」より

■木造校舎で実証された健康効果
近年、全国的に広がりを見せている木造校舎では、インフルエンザによる学級閉鎖率がRC造の約半分に抑えられています。木の持つ湿温調整機能による健康効果を示す事例の一つです。

出所:愛知教育大学 橘田教授 1996年「建築材料として木材が及ぼす学校校舎内教育環境の形成効果に関する研究」より
出所:愛知教育大学 橘田教授 1996年「建築材料として木材が及ぼす学校校舎内教育環境の形成効果に関する研究」より

■弾力性のある床が骨折事故を防ぎます
「木」の施設は鉄骨造やRC造と異なり、床が適度な弾力を保持しています。このため転倒しても大けがにつながりにくく、その安全性の高さが注目されています。また、足腰への負担も軽く、介護にあたる職員の方々の労働環境改善も期待されています。

以上

アンド・アース」ロゴについて
三井不動産グループでは、グループのロゴである「アンド(アンド)」マークに象徴される「共生・共存」、「多様な価値観の連繋」の理念のもと、グループビジョンに「アンド・アース(アンド・アース)」を掲げ、当社グループのまちづくりが常に地球とともにあることを認識し、人と地球がともに豊かになる社会をめざしています。
アンド(アンド)」マークの理念とは、これまでの社会の中で対立的に考えられ、とらえられてきた「都市と自然」「経済と文化」「働くことと学ぶこと」といった概念を、「あれかこれか」という「or」の形ではなく、「あれもこれも」という形で共生・共存させ、価値観の相克を乗り越えて新たな価値観を創出していくもので、平成3年4月に制定されました。

本件に関するお問い合わせ先

三井ホーム株式会社 広報部 広報グループ : 03-3346-4649

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