ニュースリリース

2002.01.11
多摩美術大学との共同プロジェクト
高齢者の住まいと生活空間の提案
1月25日~30日、新宿モノリスで展示会

三井ホーム株式会社(本社:東京都新宿区、社長:高橋邦男)は、多摩美術大学との共同プロジェクト、「長寿社会における高齢者の住まいと生活空間の提案」を実施し、1月25日~30日に学外展示会を開催いたします。
このプロジェクトは同大学環境デザイン学科の3年生(23人)の課題テーマとして、平成13年7月から4ヵ月間、体験学習、実態調査を織り込み実施したもので、同大学との高齢者の住環境をテーマとした共同プロジェクトは3回目となります。「高齢者の生活実態に基づく提案をする」「発想の柔軟性を生かす」ことに重点を置き、高齢者の楽しみを生かし、快適で生きがいのある生活空間を提案する住居・施設の模型を制作いたしました。
共同プロジェクトとの概要と展示会開催要領は以下のとおりです。

<共同プロジェクトの概要>

1. 目的

高齢者が生きがいと活力を持って自立した生活が送れる生活環境を確保するために求められる住宅、コミュニティのあり方について、学生は、既成概念にとらわれない新たな発想と価値観を重視しつつ、高齢者の生活実態の体験把握と楽しく安心して住み続けられる住環境についての具体的な課題研究、提案を行うこと、また、三井ホームは新しいアイディアと課題解決のヒントを見出し、当社長寿社会研究所のハード・ソフト両面の調査、研究に役立てることを目的としています。

2. 実施期間

平成13年7月~10月(7月に事前体験学習を実施)

3. 参加者

多摩美術大学環境デザイン学科23人(男性7人、女性16人)

4. 学習概要(課題・考慮要件・スケジュール)

高齢者の生活環境を考えるうえで、具体的な3課題を設定し、それぞれ住まいと空間の提案を6グループ(1グループ3~4名)で行いました。研究・提案にあたっては、地域の中での人間関係、風景の記憶など「生活圏すべて」を対象とした視点を重視しました。

-課 題-

課題1…高齢者の戸建住宅
いつまでも楽しく活力ある生活が送れ、自然や地域とのふれあいが生まれる住宅を提案しました。高齢者夫婦(世帯主が65歳以上)のみの世帯数は、2015年には1995年の約1.9倍の572万世帯になると見られています。

課題2…高齢者を含む共同住宅
高齢者が暮らす地域にふれあい、生きがいをもって暮らせる共同住宅と集合住宅を提案しました。

課題3…高齢者のための施設
地域の友人とのふれあい、趣味や勉強など、高齢者の生きがいや活力を生み出せる施設を提案しました。

-スケジュール-

7月

(1) 課題出題・選択

(2) 高齢者擬似体験(インスタントシニア体験)
三井ホームの研修センターで加齢用具を身につけ、高齢者を擬似体験。

(3) 関連住宅の見学
エコハウス三鷹(ウェルフェアテクノハウス)および東京都老人総合研究所関連施設を見学。

8月

(1) 生活者の実態調査
身近な任意の高齢者を訪問し、生活状況と意識調査、生活パターン調査を行い、高齢者の生活実態を理解し、楽しみなどを知る。

(2)調査報告
生活実態調査の結果および疑似体験などから、高齢者の生活における生きがいや活力創造を軸に、各課題ごとにポイントとなる生活空間を分析

9月

(1) 基本計画、図面作成

(2) ラフモデル作成

10月

(1) 図面、パネル、模型を完成し最終発表会を開催

5. 高齢者の生活実態調査結果

  • これまでの生活の中で蓄積された思い出が宝物になっており、それらを残したいという希望がありました。
  • 自家菜園などの趣味が生活のリズムをつくっており、また地域の人たちとの交流を生むきっかけづくりになっています。また、身体の機能が変わっても、これまでと同様の楽しみ、趣味を続けたいという希望がありました。
  • 「趣味」として習い事をしており、身近な人たちとの交流のきっかけになっているようです。
  • 人と共に住むことによる交流や、同年代同士の会話、地域の人たちとの交流によるコミュニケーションが、生活の張りや生きがいと強く結びついています。
  • 日常的ないろいろな人との出会いや思わぬ発見が、生活に変化を与え楽しみや張りにつながっています。

<各提案のコンセプトと概要>

課題1:高齢者の戸建住宅

「いちょうのあるいえ」

コンセプト
暮らしの思い出であり、地域のシンボルであるイチョウの木との関わりを重視し、イチョウの木を生活の中心に取り入れました。

  • イチョウに向けて大開口を確保した三角形のリビングダイニング、イチョウの下にはベンチを置き、これらをつなげるテラスを設定し、リビングダイニングを中心に左右にプライベート空間を設けました。
  • ダイニングのテーブルは窓を貫くようなデザインでテラスに伸びています。
  • イチョウと静かに向き合うことができる和室は、夫婦二人で過ごしたり、趣味のための「個」の空間として提案しています。
  • イチョウの下の道路に面した角地はポケットパークとして地域に開放し、近所の人が休憩に立ち寄ることができます。

「自家菜園を楽しむ家」

コンセプト
夫婦共通の趣味である「自家菜園」から「育てる・つくる・もてなす・食べる」という行為が生まれ、地域とのコミュニケーションが図れるような提案としました。

  • 皆が集まって食べたり、話したり、作業の準備をするなど、楽しむ場である開放的な「土間」を中心に、菜園の道具や野菜の貯蔵庫となる「蔵」と、奥に向かってプライバシー度が高くなる「住居部」を一続きに配置しました。
  • 雨水を溜めて再利用できるようにし、浴室は農作業後の汚れをすぐに落とせるよう、屋外からも入れます。
  • 家の南面に菜園を配置し、地域の人も楽しめるよう四季折々の変化を彩る草花なども植えています。

「庭が近い家」

コンセプト
車いすの生活でも屋外感覚で植物とふれあい、手入れが自由にできる場を日常生活の中に取り入れた住宅です。

  • 3面にガラスサッシを採用した植物とふれあえるグリーンルームを提案しました。グリーンルームには植物棚と作業テーブル、流しが配置され、車いすでも草花の手入れができます。南面は開放可能な折れ戸のサッシで、段差なく屋外テラスに出入りできます。
  • テラスの端部にも植栽されており、庭側の人とテラス側の車いす使用者とが同時に手入れできるようになっています。
  • グリーンルームに隣接するダイニングキッチンはオープンな空間とし、床の段差をなくして移動の負担を低減しました。

課題2:高齢者を含む共同住宅

「オープンキッチンの家」

コンセプト
コミュニケーションの中心を「食」と考え、食を通して共に住まう暮らしを提案しました。

  • 「個人の空間」「小人数の空間」「住人みんなの空間」の3つを設定しました。「個人の空間」は寝室とトイレ・洗面・浴室・キッチンから成り、「小人数の空間」は個人空間のキッチンを「住人みんなの空間」であるリビングダイニングキッチンに向かって開放したオープンキッチン前のカウンター部で、調理や食事という「食」を通じて自然な会話が生まれるようにしました。ちょっとしたおもてなしなど小さなコミュニケーションの場となります。
  • 共有のリビングダイニングキッチンは、みんなで調理したり食事をすることができます。また、個人で調理した食事を持ち寄って食べることもできます。

「出会いのある集合住宅」

コンセプト
出会いや交流が自然にできる集合住宅として「散歩道」のある住宅群を提案しました。

  • 集合住宅群の入口から中央を抜ける大きな散歩道を2階レベルに向けてスロープ状に配置し、道の途中に座って話ができる場を設けました。
  • 各住戸は庭や趣味のスペースに近接する小さな散歩道で結ばれ、住民とのふれあいが持てるようにしました。
  • 各住戸は、画一的な形状ではなく、生活者の暮らしに合わせました。プライバシー性の高い寝室、水廻りなどは散歩道と反対側に設置しました。
  • 駐車スペースの屋上には地域と交流できる広場を設けました。特別な仕切りを設けず外部の道路からも直接入ってこられるようにしています。

課題3:高齢者のための施設

「人が集まるお稽古場」

コンセプト
近所の人たちが気軽に利用でき、交流のきっかけとなる場としてのお稽古場を提案しました。「園芸教室」「水墨画・俳句教室」「お料理教室」の3つを想定しています。

  • 敷地全体を緑化し、大通り側に休憩できる「お茶処」を設け、中央に通りを配置することで、地域の誰もが自由に往来できるよう開放的な計画としました。
  • 「お茶処」にインフォメーションカウンターを設け、お茶を飲みながら教室の説明を受けることができます。南側にデッキを設け屋外で休むこともできます。
  • 「水墨画・俳句教室」は専用の庭を設け、他の建物が雰囲気を邪魔しないよう配慮しました。椅子座と床座を設け、床に座ることが困難な人も一緒に利用できます。

6. まとめ

このプロジェクトは今回で3回目であり、建築およびランドスケープコースの学生が新たに参加して実施したことにより、屋内外の設計面の提案や考察などにおいてさらに充実した内容となりました。生活パターンをその行動範囲や方法、同時行為者の面からも調査し、地域を含むコミュニケーションのあり方、生活に与える影響を把握できたことで、提案の中に生活全般に対する配慮が生きています。
プロジェクトの実施過程における、長寿社会や住環境の知識の普及とともに、成果に対しての検討・検証を進め、当社の今後の住まいづくりに役立てたいと思っています。

7. 学外展示会について

今回制作した提案模型およびプレゼンテーションパネルなどの展示会を、以下の日時で開催いたします。一般公開ですので、どなたでも入場できます。

期間
平成14年1月25日(金)~30日(水)

時間
午前10時~午後5時(最終日は午前10時から正午まで)

会場
新宿モノリス5階 「プレゼンテーションスクエア」
東京都新宿区西新宿2-3-1

  • * 展示物:各課題テーマに関するプロジェクト報告をパネルと模型で展示
この件に関するお問い合わせ先

総務・広報グループ:03-3346-4649

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